グルタミン(Glu)抑制培地では、肺扁平上皮癌6細胞株のうち、5つの細胞株(Sq-1、LK-2、LC-1/sq、EBC-1、RERF-LC-AI)で細胞増殖が抑えられた。一方、QG56細胞株ではほとんど細胞増殖抑制はなかった。各細胞株におけるグルタミナーゼ1(GLS1)とグルタミナーゼ2(GLS2)の mRNA発現を調べてみると、相対的GLS1 mRNAレベルはGLS2の発現レベルと比較して全細胞株で高発現していた。そのため、GLS1が肺扁平上皮癌細胞株のGlu分解に重要な役割を果たしていると推測した。ここで、GLS1選択的阻害酵素であるBPTESを用いてGLS1における細胞増殖の影響を調べてみた。Glu依存性細胞株であるRERF-LC-AIとEBC-1では強く抑制されたのに対し、Glu非依存性のQG56細胞株ではBPTESによる増殖抑制効果はほとんどなかった。これはBPTESと異なったGLS1阻害酵素であるcompound 968を用いても、Glu依存性細胞株はQG56細胞株と比較して細胞増殖を有意に抑制した。しかし、GLS1のmRNA発現レベルとGlu抑制培地下細胞増殖抑制には相関はなく、Glu依存細胞株EBC-1と非依存細胞株QG56の相対的GLS1mRNA発現レベルがほぼ同等であった。この現象を検討するため、各細胞株のGLS1とGLS2のmRNA発現比を調べてみたところ、GLS1/GLS2比がGlu依存と強い正の相関をしていた。Glu分解抑制で、mTORC1活性(下流基質であるS6 ribosomal proteinのリン酸化で評価)が抑制されるかどうかを検討した。Glu依存細胞株RERF-LC-AIではGlu抑制培地下でS6リン酸化レベルが減少するのに対し、Glu非依存細胞株QG56は同条件下で、S6リン酸化レベルの低下は認めなかった。
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