本研究の目的は、呼吸器外科領域における手術支援のための「高度な画像認識技術を用いた手術ナビゲーションシステムの開発と臨床応用」の実現で、本ナビゲーションシステムでは、術中に血管・気管支・神経などの部位に接近した際に文字と音声や光でアラーム表示させることによって手術手技の安全性を向上させるとともに、悪性腫瘍の正確な存在範囲を示し悪性腫瘍からどの程度距離を稼いで切除できているか数値で示すといった腫瘍外科的な確実性を確保できるようにすることを目標としてきた。前年度ではその予備実験を行った。対象例を可動性の少ない胸壁浸潤肺癌例とし、これらの三次元像を3Dプリンターで作成し、模擬手術空間を作成した。胸腔鏡下手術を想定した模擬手術空間と術前CT画像データから作成した3D画像を連動させるナビゲーションシステムを開発した。実際には手術時の予定切除縁と腫瘍との距離をナビゲーションシステムを用いて測定し、実測値とどの程度誤差が生じるのかを記録した。今年度は、その誤差を補正するシステムづくりを行った。また、リアルタイムに同時表示する画像システムの構築には至らなかった。これらをクリアできないと、安全に臨床応用できないと判断したことと、思うように症例登録できなかったことが重なり、臨床応用までいたらなかった。ナビゲーションシステムと実測値との誤差を補正することは可能なため、今後胸壁浸潤肺癌の手術時にCT画像上のどこを切除しようとしているかについて同時的に表示できるようになると思われる。
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