研究課題/領域番号 |
15K19934
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
春木 朋広 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (20529416)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺腺癌 / 腫瘍内多様性 / リンパ節転移 / レーザーマイクロダイセクション |
研究実績の概要 |
近年、固形がんにおける原発巣と転移巣をブロックに分割してそれぞれのゲノム変異を検索し、遺伝子変異の腫瘍内多様性を解析するという新しいアプローチがなされている。この手法によりこれまで原発巣の1~数カ所のみで議論がなされていたゲノム変異の多様性について、複数領域の包括的数理解析によりそれを明らかにする報告がなされている。 Epidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異に代表される肺腺癌のdriver oncogeneは、腫瘍発生の最も初期の段階に変異をきたす遺伝子である。腫瘍が複数の組織亜型を伴いながら増大する中で、driver mutationを有する腫瘍細胞の集団は、腫瘍内で不均一な分布をすることは少ない、即ち腫瘍内多様性は極めて稀であると報告されている。肺腺癌はその発育段階においてdriver mutationとは別に、様々な遺伝子異常が過剰に蓄積され、形態的にも複雑な腫瘍内多様性を有する腫瘍へと進化していくと考えられる。 こうした背景の中、複数の組織亜型が混在する浸潤性肺腺癌の外科切除検体を用いて、各組織亜型を構成する腫瘍細胞集団の遺伝子変異を個別に解析し、加えて同一症例のリンパ節転移巣の腫瘍細胞集団の遺伝子変異も同時に解析することにより、腫瘍が特にリンパ行性の転移能を獲得する上で重要な遺伝子変異を推定することができると考え、本研究計画を立案した。 対象とする浸潤性肺腺癌の腫瘍細胞のみをレーザーキャプチャーマイクロダイセクションしDNAを抽出した。各組織亜型、リンパ節転移巣などそれぞれから腫瘍細胞由来のDNAを抽出後に、次世代シーケンサーMiSeqを用いて、TruSeq Amplicon-Cancer Panelでリストアップされている癌関連遺伝子の48遺伝子の変異検索を行う。今後さらに詳細な解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の実験計画として、根治的切除がなされたリンパ節転移陽性肺腺癌の症例について、各組織亜型別に腫瘍細胞のみをレーザーマイクロダイセクションし、その腫瘍細胞からDNA抽出キットでTotal genomic DNAを抽出する計画であった。。腫瘍全体をマクロダイセクションする方法に比べ、線維化巣などを除外しながら腫瘍細胞のみをマイクロダイセクションする方法は、回収できる腫瘍細胞量が相対的に少なく、必然的に抽出できるDNA量も少なくなるため、DNAサンプルが計画通りに収集できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初用いていたDNA抽出キット(Takara MightyAmp for FFPE)では十分量のDNAが確保できないため、次世代シーケンサー用のDNA精製キット(QIAGEN GeneRead DNA FFPE Kit)を用いてDNA抽出を行うこととする。これにより組織固定時に用いるホルマリンで起きる人工的なC>U変異DNAを除去できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
腫瘍組織からのDNA抽出を予定通り進めることができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
抽出、精製したDNAを試料とし、次世代シーケンサーにより遺伝子変異解析を進めていく。
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