ヒト上皮成長因子受容体(EGFR) 遺伝子に変異を有する肺癌においては、EGFR チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI) に対する耐性獲得の克服が課題となっている。研究代表者らはEGFR-TKI に対する耐性獲得において上皮間葉系移行(EMT) とマイクロRNA (miR) の関与が示唆される知見を見出したため、本研究では今までの知見をさらに発展させ、EMT に関連するmiR に着目することで肺癌における薬剤耐性機序を解明することを目的として研究を進めた。平成27年度は、EMTと薬剤耐性に関与するmiRの一つとしてmiR-200が関与していることを解析により確認し、またLIN28Bという遺伝子が薬剤耐性株で発現が上昇していることを見出した。平成28年度は、そのLIN28B遺伝子の解析を進め、miR-200cとの関連を同定し、薬剤耐性株においてmiR-200cを誘導させるかLIN28B遺伝子をノックダウンすることにより、細胞増殖が抑制されることを確認したため、LIN28BがEGFR-TKIに耐性を獲得した肺癌に対する治療標的となり得ると思われた。この成果を学会・論文で発表した。最終年度では、薬剤耐性とEMTに関与する他のmiRを同定すべく、同様な解析を進めたが、有力なmiRの同定には至らなかった。しかしながら、研究機関全体を通じては上記のLIN28B同定に至ったため、一定の研究成果を挙げたと考えている。
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