研究実績の概要 |
肺移植手術、中枢型肺悪性腫瘍手術などにおける気管支形成部の治癒は主に吻合部の血流に依存している。この血流は低圧系である肺動脈から一旦肺実質に流入した血液の中枢気管支へのバックフローが主であるため、手術直後は容易に血流低下を生じ、一定の頻度で治癒障害をきたす。我々は、自家蛍光を可視化できる気管支内視鏡(Autofluorescence imaging bronchoscopy, AFI-BF)を用いて人口的蛍光造影を行った気管支内腔を評価するbronchial fluorescein angiography(B-FAG法)を考案し、気管支吻合部の血流評価における有効性を検討した。 ブタ20頭を用いた。左開胸し、左主気管支を一旦離断し再吻合した。ブタを10頭ずつ2群にわけ、左主肺動脈を結紮遮断する群(PA-群)、血流を温存する群(PA+群)を作成した。気管支蛍光造影に適した蛍光色素量を設定し、経静脈的に投与し、気管支腔内に血流により分布する蛍光色素をAFI-BFを用いて投与後30分間継続的に評価した。 PA-群では30分間のAFI-BF観察時間内に気管支吻合部末梢側の蛍光増強所見を認めなかったが、PA+群では肺実質からの逆流による吻合部末梢側の蛍光増強効果を平均207秒で認めた。またこの蛍光増強所見と反比例して組織学的に虚血による粘膜脱落、壊死所見を認めた。 以上の結果より、今回考案したBFAG法は手術室などで簡易に短時間で実施できる気管支血流評価法であり、気管支形成手術後の虚血性変化を予測できる可能性が示唆された。
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