研究課題
本研究ではヒトの呼吸機能改善を伴う代償性肺成長(真の肺再生)を起こす肺の特性を明らかにし、同時に真の肺再生に関連する分泌因子のパラクライン効果に注目した間葉系幹細胞シートの作製とその効果を検証することを目的とした。肺切除症例における術前の臨床データ(年齢、性別、喫煙歴、併存疾患などの患者背景、CT volumetryによる術前肺容積値やspirometryによる呼吸生理検査値など)と術後の臨床データ(術後6ヶ月ごと)を収集し、亜区域計算法で算出された術後予測肺容積・呼吸機能を術後6ヶ月の実測値が大きく上回った症例を真の肺再生が起きた症例と診断したところ、若年者、女性、喫煙歴がない、切除肺容量、2期的手術がその規定因子であった。また温度応答性細胞培養容器を利用したウサギの骨髄由来の間葉系幹細胞シートを作製し、シートからのVEGF、HGF、KGF、EGF産生されることを確認した。これをウサギ肺切除後モデルの残存肺に貼付したが、シートがうまく生着せず、肺再生の促進を証明できなかった。細胞シート機能の増強や生着率向上を目的として骨髄間葉系幹細胞シートに低酸素プレコンディショニング法を行った。低酸素プレコンディショニングはBM-MSCシートからのVEGF分泌を促進させ、血管新生能や抗線維化作用を増強させた。しかし、切除残存肺へのシート生着による肺再生の促進は認めなかった間葉系幹細胞シートのパラクライン効果については証明できたが、肺再生への関与については不明である。
すべて 2016
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Am J Transl Res.
巻: 8 ページ: 2222-2233