研究課題/領域番号 |
15K19941
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
橋本 崇史 大分大学, 医学部, 特任助教 (40738126)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非小細胞肺癌 / 上皮成長因子受容体 / 腫瘍内不均一性 / 免疫組織化学染色 / 次世代シーケンス / 免疫チェックポイント阻害剤 / PD-L1 |
研究実績の概要 |
2014年1月から2015年12月に当科で外科切除が行われた、EGFR陽性肺癌(L858R)を対象とし、FFPEスライドより脱パラフィン化し、賦活化の後に一次抗体EGF Receptor (L858R Mutant Specific) (43B2) Rabbit mAb (Cell signaling technology社)を用いて反応させた。評価は染色強度(score 0-3)で行い200倍視下で観察し、視野毎にそれぞれのscoreの割合を10%単位で記録した。腫瘍全体を評価し、 10%単位で記録した。 陽性細胞が存在し、かつ陰性細胞が10%以上を占める症例を不均一染色と評価した。対象は20例であり、このうち3例(15%)は、不均一染色であった。 不均一染色を示した3例について、Oncomine cancer research panelを用いて網羅的解析を行うと、EGFR (Leu858Arg)の他に、NOTCH (Glu2016Gln)とTP53(Asp186Gly)の変異が共通したSNVとして検出されたが、これらと不均一性の関係について更に解析を進めている。また、この網羅的解析を行った3症例のうち、コピー数変化として、1症例でEGFR、3症例でNPM1の増幅を認めており、これらに関しても解析を進めていく。 また、進行肺癌で近年臨床応用されている免疫チェックポイント阻害剤について、腫瘍細胞のPD-L1発現が効果予測因子であることが報告されている。我々は、非小細胞肺癌の切除例に対して、PD-L1発現についても免疫組織化学染色で検討を進めているが、多くの症例でその染色に不均一性が見られることが判明している。この不均一性が腫瘍細胞に由来するものか、腫瘍微小環境に由来するものか研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
腫瘍内不均一性へのアプローチとして、実験計画時点では、EGFR変異特異的蛋白の不均一発現から、EGFR遺伝子変異の陽性細胞が偏在を解析し、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対する耐性化への関連を想定して、研究を進めていた。しかし、近年の報告では、 EGFR遺伝子変異は早期に生じる変異であり、腫瘍内では均一にすべての細胞で有しているとの見解が主流であり、当初の想定との解離が見られているため、遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
先述の通り、近年の報告から、EGFR遺伝子変異が、肺癌腫瘍内で不均一に存在しているという、当初の予想とは反する報告が多く、EGFRの変異の有無のみで腫瘍内不均一性を検討するには限界がある。 smart cycler(takara社)を用いたqRCRにより、免疫染色の結果、染色性の異なる箇所からEGFR(L858R)のコピー数を解析しており、ハウスキーピング遺伝子と相対定量での評価を行い、コピー数の異なる細胞集団の存在が示唆できるかを解析中である。 コピー数の差異からsubcloneの存在が確からしい場合に、次世代シーケンスやOncoscan(Thermofischer社)などの手法を応用し、腫瘍内不均一性にアプローチしていく。 また、免疫染色で不均一染色を認めた症例のうち、1例は治療過程でT790M陽性のTKI耐性化をきたしており、第3世代TKIである osimertinibを使用したが、その奏効は転移部位により解離が見られた。全く奏効しなかった転移巣からはT790Mは検出されなかった。この臨床経過からも、肺癌におけるsubclonarityは示唆され、この症例に関して更なる検討を進めていく。 現在、PD-L1発現についてはE2L3N抗体(Cell Signaling Technology社)により評価を行っているが、IVDとして認可されている22C3抗体(Dako社)を用いて評価を行い、EGFRなどのDriver oncogeneやDNA損傷修復にかかわる遺伝子の異常との関連、腫瘍浸潤リンパ球などの腫瘍微小環境との関連についてさらなる検討を進める。
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