この研究の目標は、豚の肺を摘出し、レシピエントに移植し移植後再灌流行い、移植前、移植後、再灌流後に経気管支マイクロサンプリング法を用い、経時的に気道上皮被覆液を採取し、種々のサイトカインを測定し、肺障害マーカーの動態を明らかにすることであった。しかし豚の肺移植実験をした後に豚レシピエントが急性期に死亡してしまい、測定ができなかった。その原因として移植後の気管支縫合部の阻血があると考え。気管支断端の血流の動態を知ることが必要と考えた。手術用ステープルで豚の左肺全摘を行い、気管支断端の術中酸素分圧を酸素分圧/溶存酸素モニターを使用し評価をおこなった。気管分岐部から断端までの頭側と尾側の8点を測定した。測定点は左肺上葉断端外側ステープルライン遠位を①、左肺上葉断端外側ステープルライン近位を②、気管分岐部を④とし、②と④の中央点を③とした。内側も同様に、断端内側ステープルライン遠位を⑤、断端外側ステープルライン近位を⑥、左主気管支分岐内側を⑧とし、⑥と⑧の中央点を⑦とした。①の酸素分圧を1として相対的な酸素分圧を求めた。②: 3.2、③: 8.0、④: 22.0、⑤: 10.0、⑥: 12.0、 ⑦: 9.0、⑧: 26.0 であった。外側遠位~内側近位への酸素分圧の上昇傾向がみられた。しかし気管支酸素分圧の測定手技は困難であり測定電極を気管支に当てる位置や角度や豚の呼吸状態で大きく変動した。今後、より正確に気管支酸素分圧を測定するにはモニター電極の改良が必要と考えられた。
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