研究実績の概要 |
本邦において、肺癌は最も死亡数の多い癌である。2011年の厚生労働省の人口動態調査死亡統計によると、男性は50,782人、女性は19,511人が肺癌で命を失っている。肺癌発症の原因の1つとされる喫煙率が減少傾向にあるにもかかわらず、現在でも肺癌は増加傾向にある。近年肺癌の治療は、EGFR変異症例に対するGefinitib投与が大規模臨床試験により有意差をもって予後の改善が報告されたことが大きな話題となった。さらに現在EML4-ALK4変異に対するALK酵素活性阻害剤などの新規分子標的薬が試みられつつある。しかしそれらを用いても切除困難な進行肺癌や切除後再発肺癌を根治することはできず、延命は限定的であり依然として予後不良である。その理由として種々の抗癌剤・分子標的薬の治療により、一時的な腫瘍抑制効果があるものの、耐性機序により病変の進展や他臓器への転移により進行しがん死に至ることが想定される。従って、肺癌患者の予後を飛躍的に延長させるためには、切除後再発や抗癌剤耐性獲得機構に対する治療戦略を練る必要がある。 本研究は、HOTAIRを標的にした難治肺癌例に対する新しい治療法開発を最終目標に,PDXと遺伝子改変マウスを用いて、この遺伝子と他の悪性化機構並びに癌幹細胞との関連について解明することが目的である。研究の結果、HOTAIRの下流分子として、ケモカインが同定され、これらががんの悪性化をになっている可能性が示唆された。これにより、HOTAIRが治療標的となることが示唆された。
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