くも膜下出血後の脳血管攣縮は予後に影響する合併症である。当科ではウサギくも膜下出血モデルにおいて、脳血管壁内での酸化LDLとその受容体LOX-1の存在、及びprocyanidin投与による脳血管攣縮抑制効果を証明した。しかし、脳血管壁内へのLDL取り込み経路を証明するには至っていない。本研究ではウサギくも膜下出血モデルを使用し、蛍光標識LDLを用いることで、SAH時の血管壁内LDLの起源を解明することを目的とした。 病態の中核をなすLDL起源に関して、1)SAH時の内皮細胞(blood-arterial-junction)障害による循環血液中LDLの血管壁内進入、2)くも膜下血腫中のLDL、3)血管壁のLDLレセプターを介しての取り込みなどを推察した。 1)に関しては、まずはControl群、SAH群に対し、Evans blue投与を行いblood-arterial-junctionの破綻につき確認を行った。Control群では脳動脈血管外へのEvans blue漏出を認めなかったのに対し、SAH群では血管外漏出を認め、blood-arterial-junction破綻が起こることが確認され、この結果に関してはこれまでの報告通りの結果であった。しかし蛍光標識LDL投与を追加しても動脈壁への移行は確認できなかった。2)に関しても、蛍光標識LDLの含有した自家動脈血のくも膜下腔注入によるSAHを作成したが、動脈壁へのLDL移行は確認できなかった。 両実験でLDLを確認できない結果となったが、循環血液中からの移行でもくも膜下腔の血腫からの移行でもないためなのか、または投与濃度など条件の問題なのかにつき検討が必要であり、実験を継続中である。
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