神経膠腫の手術において、不明瞭な腫瘍境界の剥離により術後神経症状の悪化を来す危険性があり、安全かつ最大限の摘出を目指すにあたり、術中蛍光プローブによる腫瘍の可視化は有効である。現在5-アミノレブリン酸(5-ALA)が悪性神経膠腫手術において保険収載され汎用されているが、偽陽性・偽陰性、術前内服投与・再投与不可等の限界がある。それゆえ本研究では、5-ALAを補完する局所噴霧にて診断可能な、脳腫瘍を特異的に標識する新規蛍光プローブの開発を目指した。 まず、凍結した神経膠腫患者のホモジェナイズサンプルから、腫瘍ごとのミックスサンプルを作成した。次に、生体情報学教室で作成されたHMRGを蛍光母核とする、300種類を超えるペプチダーゼプローブライブラリーを用いて、腫瘍部位と周辺部位の蛍光強度を経時的に計測し、差異の大きいものから上位10%程度を有望なプローブとして選定する、というプローブスクリーニングを行った。また、昨年度までにはなく今回新規に作成されたプローブと、初年度・昨年度で選定したプローブとを合わせて、手術で得られた生検体へのスプレー実験を行った。なお、腫瘍の不均一性を鑑み、実験に用いた検体の細胞密度や壊死組織の有無を検証するため、生検体をパラフィン固定し、免疫組織化学染色を含めた病理組織学的検討を加えた。 その結果、膠芽腫に対して有効なHMRGプローブとして7種類を選定した。 さらに、安全性等を確認するための動物実験モデル作成のため、膠芽腫の細胞株U87を使用しSCIDマウスの同所性異種移植モデルを作成した。形成された腫瘍のホモジェナイズサンプルを用いて、先にヒト臨床検体を用いた実験で選定されたプローブの蛍光強度の推移を測定した。
|