研究課題/領域番号 |
15K19954
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田村 郁 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (70629146)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 脳腫瘍 / microRNA / がん幹細胞 / 治療抵抗性 |
研究実績の概要 |
悪性脳腫瘍の治療抵抗性に脳腫瘍幹細胞が大きく関わっていることが近年示唆されるようになり、脳腫瘍幹細胞が治療の重要な標的として認識されはじめている。このことから、本研究は脳腫瘍幹細胞を制御するmicroRNAとその標的分子の単離・同定を行うことにより、悪性脳腫瘍の治療抵抗性機序を解明することを目的とする。更には、microRNAを用いて、悪性脳腫瘍の治療抵抗性を克服しうる新規治療法を開発することを目的とする。この目的を達成するために、平成28年度は膠芽腫患者手術検体からの脳腫瘍幹細胞の樹立を継続した。膠芽腫患者の手術摘出標本のうち病理診断後の残余を用い、Neurosphere法による培養で脳腫瘍幹細胞を分離し、特異的に増幅させた。Neurosphere法で培養した細胞は脳腫瘍幹細胞マーカーであるCD133分画が通常の細胞より増加していることを確認した。一方、血清入りの培地でも膠芽腫細胞の培養を行いコントロール腫瘍細胞(非幹細胞)とした。膠芽腫手術患者から樹立した脳腫瘍幹細胞は増殖が遅く増幅に時間がかかったが、十分増幅されたため、今後脳腫瘍幹細胞とコントロール脳腫瘍細胞(非幹細胞)を用いて、microRNA arrayによる発現スクリーニングと合成ds-miRNAライブラリーを用いた機能的スクリーニングによるmicroRNAプロファイリングを行い、脳腫瘍幹細胞を規定するmicroRNAを同定し、脳腫瘍幹細胞を制御する分子機構、すなわち治療抵抗性制御機構を解明していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
出産に伴い、産休、育休を取得したため
|
今後の研究の推進方策 |
樹立した脳腫瘍幹細胞とコントロール腫瘍細胞を用いて、microRNAプロファイリングを行い、脳腫瘍幹細胞を制御するmiRNA (以下miRXとする) を同定する。次に、脳腫瘍幹細胞を用いて合成ds-miRNA及びsiRNAを用いたmiRXの発現制御を行い、Western-blot解析ならびにレポーター解析等の手法を用いてmiRXの標的分子を同定する。このことにより、治療抵抗性機序の解明を試みる予定である。また、実際の膠芽腫患者の検体でmiRXとその標的分子の発現を調べ、miRXとその標的分子の発現が放射線・化学療法に対する治療抵抗性や臨床経過と相関があるかどうかを明らかにする。脳腫瘍幹細胞で発現抑制が見られるmiRXは、miRXを量的に補うことで、miRNA replacement therapyとして治療薬として応用可能と考えられるため、脳腫瘍幹細胞で発現が低下しているmiRXをin vivo機能解析へ進む候補として選択する。その後、miRXを発現誘導させることで、miRXが悪性脳腫瘍の発生、増殖能、化学療法に対する治療抵抗性に影響を与えるかどうか、in vitro, in vivoで解析する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
出産に伴い産休、育休を取得し、研究期間が短くなったため次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の消耗品費(細胞関連試薬、一般試薬)として使用する予定である。
|