本研究に使用する患者由来の膠芽腫幹細胞はNotch阻害剤に高感受性群と低感受性群に分けられた。Notch阻害剤高感受性群はAktシグナルの阻害が認められたが低感受性群は認められなかった。そのためNotch阻害剤低感受性の膠芽腫幹細胞群に対し、Notch阻害剤とAkt阻害剤の併用療法の有効性を評価した。はじめにNotch阻害剤高感受性群と低感受性群に対してAkt阻害剤単剤の効果を比較した。結果は、全ての膠芽腫幹細胞に対し細胞増殖抑制を示すも2群間でAkt阻害剤の有効性に有意差は認めなかった。次にNotch阻害剤低感受性群に対しAkt阻害剤のAktシグナル阻害を確認するためにリン酸化Aktのタンパクレベルを評価した。Notch阻害剤よりもリン酸化Aktのタンパク発現レベルを著しく低下させた。Notch阻害剤低感受性群に対するNotch阻害剤およびAkt阻害剤の単剤と2剤併用の効果を比較した。2剤併用は単剤よりも有意に細胞増殖抑制、幹細胞形質維持の抑制、アポトーシス誘導の増強が認められた。以上の結果から、Notch阻害剤低感受性膠芽腫幹細胞は、Notch阻害剤にAkt阻害剤を併用することによって細胞増殖抑制および幹細胞形質維持の抑制、アポトーシス促進の増強効果が認められた。その増強効果のメカニズムとしてAktシグナル阻害が関与していると考えられた。本研究結果からNotchシグナル阻害にAktシグナル阻害を追加することによってNotch阻害剤抵抗性膠芽腫幹細胞を制御可能であることが示唆された。今後は、動物実験におけるNotch阻害剤とAkt剤阻害剤の併用効果を解析し臨床応用への可能性を探る予定である。
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