研究課題
本年度には、Nrf2活性化剤であるBardoxylone methyl(BARD)0.6mg/kgの静脈内投与が、2時間の一過性中大脳動脈閉塞モデルにおいて、脳梗塞体積を減少し、神経学的機能が改善することを示した。脳虚血後24時間では、ウエスタンブロットにおいてNrf2活性化ならびに代表的下流因子であるHemeoxygenase-1(HO-1)の活性化を認めた。次にBARDによる脳血液関門の保護効果につき検討を行った。ワーファリン投与下に6時間の一過性脳虚血を負荷したモデルを作成し、BARD投与による脳梗塞体積、出血量、神経学的評価を行った。BARDは6時間の脳虚血後の脳梗塞体積は減少しなかったが、出血性梗塞を減少させ、出血量も減少していた。神経学的評価では、BARDの投与により神経所見の改善が認められた。BARD投与では脳血液関門の透過性亢進も改善した。免疫組織学的評価およびウエスタンブロットでは、血管内皮細胞、周皮細胞の減少の抑制が認められ、両者においてNrf2ならびにHO-1の活性化が認められた。次にBARDの誘導体であり、よりNrf2活性が強く細胞毒性の低い新規Nrf2活性化剤であるRS-9を用い、2時間の一過性脳虚血モデルにおける脳梗塞体積ならびに神経学的機能を評価した。RS-9 0.2mg/kgの投与は脳梗塞体積を減少し、神経学的所見を改善した。またRS-9の投与により、Nrf2の活性化並びにHO-1の活性化を認めた。RS-9を用い、治療時間延長を目指して3時間後、4.5時間後、8時間後など再灌流までの時間を検討したが、有意な脳梗塞体積・神経機能の改善は得られなかった。以上より、BARDおよびRS-9によるNrf2活性化は、脳虚血再灌流障害に対し保護効果を持ち、その効果はBBBの保護を含んでいることが示された。
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