研究課題/領域番号 |
15K19969
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平山 龍一 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20593734)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 髄芽腫 / 遺伝子発現プロファイリング / 免疫組織化学染色 / 予後予測 |
研究実績の概要 |
自施設の標本ライブラリより初回手術で採取された26症例分のパラフィン包埋標本を用い、7種類の一次抗体(DKK1、SHH、NPR3、KCNA1、β-catenin、GLI1、c-myc)を用いて免疫組織化学法を行った。これを用いて症例ごとに染色の強度をスコアリング化した上でクラスター解析を行い、4つのサブグループ(WNT、SHH、group 3、group 4)に分類を行った。その結果、26例の内訳は、WNT:4例(15%)、SHH:7例(27%)、group 3:7例(27%)、group 4:8例(31%)であった。これらの分類内訳から日本人におけるサブグループの内訳はこれまでに欧米からの報告と大きくは変わらなかったが、group 3がやや多くなっていた。この差異が人種差を反映しているかどうかについては今後検討を追加していく。 治療成績とのサブグループとの関連について、播種性病変は、WNT、SHHで少なく、group 3、group 4で多かった(p<0.05)。また、臨床病期分類でhigh risk群に分類されていた症例は、WNT、SHHで少なく、group 3、group 4で多かった。これはgroup 3、group 4の予後の悪さが反映された結果であると考えられる。SHH、group 3、group 4の5年無増悪生存率は、それぞれ75.0%、50.0%、64.8%であり、WNTでは再発は認めなかった。これらについても欧米からの報告と大きな相違は認めなかった。 さらに、初回治療後に再発を来たしたものは7症例認めており、これらのうち、6例は標準リスクに分類されたSHH、group 4であった。これは従来の年齢と画像および術中所見による臨床病気分類では新規分類で予後の悪いとされる群(SHH、group 3、group 4)を見逃し、初回治療の強度を落としてしまった結果を反映したものと考えられる。以上のことから免疫染色を用いた分子サブグループ解析がより正確な臨床経過や予後を予測出来る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
凍結標本を用いた遺伝子発現解析を含めた実験系から得られるデータが安定しておらず、使用機器選定を含めた研究手順について見直しを行っているため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、既存の結標本を用いた遺伝子発現解析を研究手順の合理化と並行して進める。また、新規サンプルの収集と、治療内容や予後について臨床データ収集を行っていく。マウスを用いた髄芽腫モデル動物の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプル数が目標に達しなかったため、年度内に行う予定であった遺伝子発現関連の解析が行えなかった。 またマウスを用いた髄芽腫動物モデル作成が安定せず、こちらの解析も行えていないため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の早期に目標サンプル数に達する見込みであり、遺伝子発現解析の試薬に繰り越しした研究費を用いる予定としています。
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