研究課題
髄液は脳内の病態を鋭敏に反映する体液である。申請者らは、髄液中のマイクロRNAと髄液メタボローム解析を組み合わせて、脳腫瘍の新たなバイオマーカーを探索し、脳腫瘍の新たな病態解析や診断感度の向上のための研究を計画した。まず、脳腫瘍患者の髄液を採取し、一般的な髄液検査を施行した。(LDH, 蛋白、糖、細胞数など)その後、髄液の一部をガスクロマトグラフィー/質量分析器を用いて、代謝物を測定した。32例のグリオーマ患者の髄液メタボローム解析では、61個の代謝物が同定できた。IDH変異グリオーマでは一部の腫瘍で髄液中2HGの上昇が認められたが、IDH変異グリオーマの有用なバイオマーカーとなるほど感度、特異度とも高くはなかった。グリオーマの悪性度と髄液中乳酸、クエン酸、イソクエン酸の濃度は非常に良く相関し、またIDH変異グリオーマでは髄液中クエン酸、イソクエン酸の濃度が上昇していた。これらより、髄液メタボローム解析で、グリオーマの悪性度、IDH変異を予測する指標となる可能性が示唆された。髄液中マイクロRNAの発現に関しては、現在解析中であるが、preliminaryな解析では、miR-10bの上昇が確認できた。
3: やや遅れている
髄液中のマイクロRNAの網羅的発現解析がまだ十分行われていないためである。髄液中のマイクロRNAの抽出法を確立させ、internal controlを決めて、マイクロRNA量の定量化を早期に確立させなければならない。保存している髄液の量が不十分なものもあり、髄液の採取も引き続き行わなければならない。
髄液中のマイクロRNAの抽出、網羅的発現解析を行い、様々な脳腫瘍で上昇あるいは低下している髄液中マイクロRNAを同定する。また、代謝物との関連性についても解析する予定である。
髄液中マイクロRNAの測定を行う実験がまだ確立しておらず、検査試薬などを購入できなかったためです。また、メタボローム解析ができる保存されている髄液がまだ少なかったためです。解析できる髄液が集まりましたら、解析する予定です。
髄液のマイクロRNA発現解析およびメタボローム解析に必要な試薬、キット、質量分析器使用料などに使用する予定です。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
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