研究課題
脳脊髄液(以下髄液)は脳内の病態を鋭敏に反映する体液である。グリオーマ患者の髄液を用いたメタボローム解析で、グリオーマの悪性度が上昇すると共にクエン酸、イソクエン酸、乳酸が増加し、IDH変異の存在によりクエン酸、イソクエン酸が低下することが判明した。これは、祖組織を用いたメタボローム解析と同様の結果であった。IDH変異によりグリオーマ細胞内では2HG(2-hydroxyglutarate)が増加することが報告されている。そこで、IDH変異を有するプラスミドをグリオーマ培養細胞に導入すると、グリオーマ細胞内で2HGの増加を質量分析器によるメタボローム解析で確認できた。次に、グリオーマ患者の腫瘍をMRスペクトロスコピーを用いてメタボローム解析を行うと、IDH変異陽性グリオーマでは2HGの上昇が認められ、腫瘍組織を質量分析器を用いて解析すると、IDH変異を有するグリオーマ組織では著明に2HGが上昇していることが確認できた。そこで、グリオーマ患者の髄液を用いて、LC/MSを使用して髄液中2HGの測定を行った。53例のグリオーマ患者のうち、IDH野生型グリオーマは44例であり、IDH変異型グリオーマは11例であった。IDH野生型患者の髄液中2HG濃度は平均0.452uMで、IDH変異患者髄液中2HG濃度は平均0.61uMで、有意な差は認めなかった(p=0.27)。また、抗悪性度グリオーマ患者髄液の2HG濃度は平均0.46uMで、低悪性度グリオーマ患者の髄液2HG濃度は平均0.55uMであり、これも有意な差は認めなかった(p=0.45)。以上より、髄液中2HGの濃度は、グリオーマのIDH診断および悪性度診断には有用ではなく、他の因子を検討する必要があることが判明した。また、髄液中マイクロRNAについては、現在解析中である。
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