研究課題
脳動脈瘤は男性より女性の発症率が高く、特に閉経期女性に多くみられる。申請者らはこの原因としてエストロゲンの欠乏が大きく関与することを基礎研究においても明らかにし、エストロゲンやエストロゲン受容体作動薬が脳動脈瘤形成や破裂を抑制することを見出した。しかし、エストロゲンの補充療法は子宮体癌や乳癌発生などのリスクがある。近年、新たに開発された選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)は骨粗鬆症治療に用いられ、癌発生リスクや副作用が少ないとされている。本研究ではSERMによる脳動脈瘤形成および破裂抑制作用を調べ、臨床応用への可能性を評価する。また有効性の作用機序を解明し、脳動脈瘤形成あるいは破裂予防の治療の標的を明らかにすることを目的に本研究を行ってきた。雌のラットを用い、高血圧誘導、卵巣摘出によるエストロゲンの欠乏、一側頚動脈結紮により脳動脈瘤が形成される。従来のモデルでは脳動脈瘤破裂の発生頻度が低いために脳動脈瘤破裂の機序を検討することは困難であった。しかし、頭蓋内への血行力学的負荷をさらに増強することによって、再現性良く脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血をきたすモデルを新たに開発した。このモデルにSERMであるバゼドキシフェン酢酸塩(ビビアント)を投与することによって、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の破裂を抑制することを見いだした。このビビアントは臨床において骨粗鬆症に対して使用されており、安全性は確認されているために、臨床応用できる可能性がある。現在、再現性の確認とその機序を解明するべく本研究を継続している。
2: おおむね順調に進展している
主な最初の目的である脳動脈瘤破裂モデルの確立ができた。脳血管壁への血行力学的負荷を以前より増強させることによって、脳動脈瘤破裂が再現性良く確認された。さらにこのモデルに対して選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)であるバゼドキシフェンを投与することにより、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の発生頻度を低下させることを見いだした。現在、バゼドキシフェンによる脳動脈瘤破裂抑制の機序解明について検討を行っている。
下記の計画を実施し、脳動脈瘤破裂の誘導および分子機構の解明を行う。1)脳動脈瘤破裂モデルにバゼドキシフェンを0.3あるいは1.0mg/kg/dayの量で経口投与を行う。投与開始後3週間目に脳血管を摘出し、免疫染色および定量PCRを行う。エストロゲン受容体(ER) α、ER β、TNF-α、MMP-9、TIMP-2の蛋白およびmRNAを測定する。2)雄を用いた脳動脈瘤破裂モデルを確立し、雄のモデルにおいてもバゼドキシフェンが有効であるか検討を行う。性差についても検討を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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