研究課題
【目的】生活習慣病が認知症の発症・進展に関与し、さらにエピジェネティック異常を引き起こすこと、また認知機能に関しては、脳内ヒストン脱アセチル化酵素2(HDAC2)が影響していることが報告されている。レニン・アンジオテンシン系(RAS)は生活習慣病、認知症に関わっており、我々はアンジオテンシンII2型(AT2)受容体刺激が改善効果を示すことを報告してきた。しかし、脳におけるAT2受容体とHDAC2の関連は明らかにされていないため、血管性認知症モデルを用いて検討した。【方法】10および20週齢雄性C57BL/6(WT)、AT2受容体欠損マウス(AT2KO)における海馬のHDAC2の発現を検討した。認知機能への影響を検討するために10週齢のWT、AT2KOに両総頸動脈狭窄術(BCAS)を施行し血管性認知症モデルを作成、4週間後からHDAC阻害剤(SAHA)を2週間投与し、モリス水迷路試験を用いて空間認知機能への影響を検討した。【結果】10週齢の海馬HDAC2発現はWT、AT2KOで変化はなかったが、20週齢ではWTに比べてAT2KOで発現が増加していた。血管性認知症モデルでは、WT-BCASはWT-shamに比べて認知機能が低下していたが、SAHA投与で改善した。AT2KOにおいても、BCASで低下していた認知機能は、SAHA投与により改善していたが、その改善効果はWTに比べて強かった。脳表層血流量は、両マウスともにBCASにより低下し、SAHA投与による改善効果は認められなかった。海馬におけるHDAC2 mRNA発現は、BCASにより増加傾向が認められた。炎症性サイトカインはBCASで増加していたが、SAHA投与群で低下していた。【結論】以上の結果から脳内AT2受容体がHDAC2の発現に関与しており、エピジェネティック異常を改善することで認知機能低下を抑制することが示唆された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件)
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