研究実績の概要 |
本研究は、脳脊髄液中に含まれるエクソソーム内のmicroRNAプロファイリングを行い、新たな診断マーカーや治療効果判定法の開発を目的としている。 まず、脳脊髄液中に含まれるエクソソーム内のmicroRNAプロファイリングを行うため、当院倫理委員会の承認の下、同意を得た膠芽腫患者5例とコントロールとして非腫瘍(正常圧水頭症)患者3例より脳脊髄液を採取した。引き続いて、採取した脳脊髄液中に含まれるエクソソームを単離し、small RNA分画を抽出してマイクロアレイにて2006個のmicroRNAの発現を網羅的に解析した。 これまでに我々は、NSCと比較してグリオーマ幹細胞培養液中に含まれるエクソソーム内のmicroRNAプロファイリングを済ませており、有意に発現異常を示したmiRNAは211個(上昇77個, 低下134個))同定している。そして、それらをグリオーマ幹細胞特異的microRNAと呼称している。 今回、膠芽腫患者の脳脊髄液中で非腫瘍患者と比較して膠芽腫患者の有意に発現異常を示したmiRNAは107個(上昇57個, 低下50個)であり、グリオーマ幹細胞培養液中で共通して有意な発現異常を示したグリオーマ幹細胞特異的miRNAは3個であった。上昇したmicroRNAはmiR-451bで、低下したmicroRNAはmiR-550a-5pおよびmiR-652-5pであった。すでに、miR-451はグリオーマに関連するmicroRNAと報告されており、一部の性状解析は解明されているが、腫瘍マーカーとしての意義は未解明のままである。しかし、定期的な脳脊髄液の採取は侵襲的であり、臨床現場の状況を考慮すると、miR-451を腫瘍マーカーとしてモニタリングする方法は困難と考えられた。
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