脳腫瘍細胞株樹立:愛知医科大学では研究利用可能な脳腫瘍検体を取得・蓄積するシステムが存在しなかったため、手術で摘出された腫瘍組織を大学全体で凍結保存し研究利用可能とするシステムであるバイオバンクの設立に協力するとともに、多数の脳腫瘍組織検体をバイオバンクへ登録し保存した。腫瘍細胞をマウス腹腔内で培養するための器具の準備や移植手技の訓練も併せて行い環境整備は十分に行うことができたが、最終段階の腫瘍検体移植および細胞株の樹立を最終年度内に施行することができなかった。 脳腫瘍におけるRNA発現の解析:共同で研究を行っている福島県立医科大学医学部脳神経外科において、手術摘出された脳腫瘍(髄膜腫・神経鞘腫・神経膠腫)におけるRNA発現の解析を行った。髄膜腫に関しては悪性度とRNA発現の関連を検討したが、特徴的な傾向は指摘できなかった。神経鞘腫に関しては、神経線維腫症2型の有無を含む患者背景とRNA発現の関連を調査した。その結果、患者年齢と嚢胞の有無に関してRNA発現に緩やかな差異を指摘することが出来た。髄膜腫・神経鞘腫・神経膠腫の検体に関して網羅的なRNA発現解析も行い、複数のRNAが特徴的な発現上昇を示していることを発見した。ある細胞接着因子はとくに髄膜腫で高い発現を示し、正常組織では発現量が低いことを免疫染色でも確認しており、今後の髄膜腫免疫治療の良い標的分子になると考え研究を継続している。 悪性頭蓋底腫瘍の臨床成績の検討:研究対象となる頭蓋底腫瘍検体選定の過程において、とくに稀な疾患である頭頚部悪性腫瘍が我々の施設で多く治療されていることが判明した。希少疾患の治療報告は今後の患者治療に大きな利益となるため、英文で報告を行った。 脳白質解剖の研究:脳腫瘍の浸潤と脳白質解剖には密接な関連が示唆されていることから、より効率的な白質解剖を行うための研究も併せて行った。
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