研究課題/領域番号 |
15K19980
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
齋藤 紀彦 東邦大学, 医学部, 講師 (60459766)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経膠芽腫 / グリオーマ幹細胞 / Notch / γセクレターゼ阻害薬 / 新規分子標的治療 |
研究実績の概要 |
我々が所有している25株のグリオーマ幹細胞に対してγセクレターゼ阻害薬を投与しその薬理作用の検討を行った。まず3種類のγセクレターゼ阻害薬(DAPT, BMS-708163, RO4929097)を使用し薬剤感受性試験を行ったところ、3剤に対して同様の感受性を示しグリオーマ幹細胞は高感受性を示す群と低感受性を示す群の2つに分けられた。また25株のグリオーマ幹細胞におけるNotchシグナルの活性について検討したところ、高感受性群ではNotchシグナルが活性化していることが明らかになった。またγセクレターゼ阻害薬によりNotchの細胞内ドメインであるNICDの発現低下が認められ、活性が低下することが明らかになった。これはγセクレターゼ阻害薬がNotchからNICDが分離するのを阻害することでNotchシグナルの活性を低下させていることを示唆している。 次にγセクレターゼ阻害薬の幹細胞性維持阻害作用の解析を行ったところ、高感受性群でグリオーマ幹細胞の特徴の一つであるneurosphere形成が阻害された。次にグリオーマ幹細胞に対して分子生物学的手法を用いてNotch発現を低下させた細胞株を作成したところ、増殖能やneurosphere形成能が阻害された。この結果よりNotchシグナルがグリオーマ幹細胞における幹細胞性維持に重要な役割を持っているものと考えられた。現在はγセクレターゼ阻害薬による分化誘導作用の解析を行い、グリオーマ幹細胞に対する薬理作用を明らかにし、新規分子標的治療への応用の可能性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在保有している25株のグリオーマ幹細胞を用いてγセクレターゼ阻害薬の薬理作用の解析を行うことができた。残りの細胞株に対して同様の検証をすると同時にγセクレターゼ阻害薬による分化誘導作用の解析を行っている。またマイクロアレイによるグリオーマ幹細胞の遺伝子発現プロファイル解析の準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
残り25株のグリオーマ幹細胞に対するγセクレターゼ阻害薬の薬剤感受性試験を早期に進める。実験系はすでに確立されており、その進行に特に問題はないものと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は研究協力者であるるMD Anderson Cancer CenterのProf. WK. Yungより研究試薬(γセクレターゼ阻害薬)の提供があり、実験に必要な消耗品の購入経費が若干少額で実験を実施することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度よりマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を中心とした研究が計画されているため、消耗品の購入経費が多く見込まれている。
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