研究課題/領域番号 |
15K19990
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
楫野 良知 金沢大学, 大学病院, 医員 (60622884)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カスタムメイドインプラント / 抗菌加工 / コンピューター支援手術 |
研究実績の概要 |
人口の高齢化が進んだ現代の整形外科のあらゆる分野において、手術に用いる金属製インプラントは欠くことができない整形外科医の武器である。健康寿命の延伸を目指す患者の日常生活動作 (activities of daily living, ADL)や生活の質 (quality of life, QOL)に直結するこれらのインプラントを高機能化することは、非常に重要な課題である。我々が独自に開発したヨード担持加工技術は、金属インプラントの表面に抗菌性と骨親和性を同時に付加するこれまでにない革新的な技術である。この技術と当研究室でこれまで取り組んできたCAOS (Computer assisted orthopaedic surgery)技術を融合し、究極の個別化医療である抗菌カスタムメイドインプラントを臨床応用し世界に発信すべく、研究開発を進める。 平成27年度研究期間には、研究実施計画に掲げた非臨床試験の1つである、ヨード担持加工インプラントの表面加工の評価 (表面加工前後における表面粗さの変化および表面加工前後におけるインプラントサイズの変化)を順次実施した。表面粗さの変化は母材の表面加工の影響をわずかに受けていたが、コントロール可能な範囲内と考えられた。またインプラントサイズの変化はごく微量であり、臨床使用における影響は少ないと判断できる範囲であった。これらのデータは薬事承認申請に向けてのインプラントの基本的特性に関する重要な結果であり、新しい知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヨード担持加工インプラントの表面加工の評価に関して、以下の2つの検討を行った。 1) 表面加工前後における表面粗さの変化。母材となる金属の表面加工が酸化被膜の形成に与える影響を明らかにするため、市販のインプラントの表面加工を模した金属試験片を用いて検討を行った。表面粗さの異なる3種類の試験片 (Ti6Al4V合金、20x20x5mm、各群n=4)を製作した。この試験片に対しヨード担持加工を行い、走査型電子顕微鏡による表面性状の観察、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いたヨード担持量の計測、JIS規格に準じ接触型線粗さ測定器を用いた算術平均粗さ (Ra)、最大高さ (Rz)の計測の3種類の検討を行った。結果、ヨード担持加工は母材の表面加工によらず付加可能であった。ヨード担持加工後の表面粗さ (Ra、Rz)は母材の表面加工の影響をわずかに受けており、この変化が骨固着性や摩耗に与える影響については今後のさらなる検討を要する。 2) 表面加工前後におけるインプラントサイズの変化。表面加工の付加によるインプラントサイズの変化は、インプラント同士の嵌合部に何らかの影響を与える可能性があるため、金属試験片を用いて検討を行った。太さの異なる4種類の棒状試験片 (TiもしくはTi6Al4V合金、長さ50mm、直径3-15mm、各群n=4)を製作した。この試験片に対しヨード担持加工を行い、マイクロメーターによる加工前後のサイズ変化の計測を行った。結果、ヨード担持加工によりインプラントサイズはわずかに変化していたが、その変化量は非常に微量であった。今後、腐蝕等のさらなる検討を要する。 以上の結果を得たことより、「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には研究費を適正に使用したが、試験片の製作および計測作業に予想よりも時間を要し、未使用額が生じたため平成28年度に繰り越した。平成28年度は引き続き、ヨード担持加工インプラントの表面加工の評価および、物理的特性の評価を行っていく予定である。ヨード担持加工インプラントは、薬物と機械器具が組み合わされた、いわゆるコンビネーション製品に該当するため、開発、承認申請に向けては、従来の医療機器とは異なる取り扱いが必要になる。現在、進行中であるコンビネーションプロダクトのガイドライン策定事業にも積極的に関わっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度には研究費を適正に使用したが、試験片の製作および計測作業に予想よりも時間を要し、未使用額が生じたため平成28年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は引き続き、ヨード担持加工インプラントの表面加工の評価および、物理的特性の評価を行っていく予定である。
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