膝半月板損傷によって半月板機能が失われると、膝関節軟骨は変性し、非可逆的な関節症性変化をきたす。半月板は血流に乏しい組織であり、自己修復能力が低いため縫合術の成績は安定していない。脂肪由来幹細胞シートを用いて半月板の治癒能力の促進および新しい半月板縫合術の確立を目指して研究を行った。ウサギを対象として脂肪由来幹細胞シートを半月板断裂部に挟み込み縫合術を行ったが、対照群と比較して半月板治癒促進を証明することはできなかった。当初、ウサギ内側半月板縦断裂(長さ15㎜)モデルで実験を行ったが、半月板が治癒するモデルを得ることができなかったので、縦断裂モデルの改良(長さ10mm)や半月板縫合方法の改良および縫合糸の変更などを行ったが、半月板治癒モデルを確立することができなかった。原因としては、術後の後療法などが挙げられた。一方で、研究を進めていくと、脂肪由来幹細胞シートには、半月板再生の足場になりうる可能性を見出すことができた。そのため、ウサギ内側半月板亜全摘モデルでの半月板再生能力についての研究を追加でおこなった。その結果、半月板亜全摘術後に脂肪由来幹細胞シートを膝関節内に留置することで、再生した半月板の面積が対照群と比較し有意に大きい結果を得ることができた。組織学的には半月板を再生することはできなかったが、滑膜組織の侵入および足場として脂肪由来幹細胞シートが有効であった可能性が示唆された。
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