研究課題/領域番号 |
15K19995
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柏井 将文 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00576910)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 骨折治癒 / 骨再生 / 骨吸収抑制薬 / 骨形成促進薬 |
研究実績の概要 |
(研究目的) 本研究は骨脆弱性骨折に対して、骨形成促進薬と骨吸収抑制薬を組み合わせることで新世代の骨癒合促進法を確立することを目的としている。我々は種々の骨代謝修飾薬の組み合わせによる骨折治療法を開発し、その効果を検証することを計画した。 (研究実績)複雑な骨折修復過程を皮質骨修復と海綿骨修復に各々分け、皮質骨と海綿骨で各々の骨欠損修復過程における骨形成促進薬(テリパラチド:TPTD)と骨吸収抑制薬(デノスマブ:DMAB)の併用効果について検討した。皮質骨修復過程と海綿骨修復過程の評価モデルとしてマウスの大腿骨骨幹部および骨幹端部に各々骨欠損を作成し、その修復治癒過程を検討した。 海綿骨欠損部における再生骨の骨量は、併用群が単剤群に比して有意な増加を認めた。皮質骨欠損部では再生骨で併用群と単剤群で有意差はなく、併用投与による効果を認めなかった。組織学的検討では併用群とDMAB単独投与群で線維性骨や軟骨基質が残存し、層板骨形成の遅延を認めた。骨折部位以外において海綿骨骨密度が併用群で単剤群に比し有意な骨密度増加を認め、ヒトにおける報告と同様の結果であった。海綿骨部の骨修復は膜性骨化により行われことが知られており、海綿骨部の骨修復(膜性骨化)が併用により促進されることが示された。一方、皮質骨の骨修復に対しては明白な治癒促進効果を認めなかった。以上の結果より、椎体骨折のような海綿骨を多く含む部位の骨折については併用による治癒促進効果が得られる可能性がある。現在閉経後骨粗鬆症のモデル動物として、卵巣摘出マウスで同様の検討を現在行っており、解析数はまだ十分ではないが正常動物と同様の結果が現在得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画の予定範囲内で研究は進行している。閉経後骨粗鬆症モデル動物として、卵巣摘出マウスで同様の検討を現在行っており、解析数はまだ不十分であるが正常動物とほぼ同様の結果が現在得られている。
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今後の研究の推進方策 |
閉経後骨粗鬆症動物モデルでの検討ののち、至適な骨形成促進薬と骨吸収抑制薬の投与期間・投与間隔の検証を予定している。骨形成促進薬と骨吸収抑制薬両方を併用に際して骨形成促進薬の至適投与開始時期(骨折作成直後から骨折作成後一定時間が経過してからか)、骨吸収抑制剤の至適投与開始時期投与方法(間欠投与あるいは一度のみの投与)・投与時期などについてより有効な治療効果を導くための検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において骨折作成や卵巣摘出などの動物に対する侵襲的処置の後の経過において、高率に死亡することが多かった。そのため動物購入および飼育費、高額な薬剤購入費を計上していた。幸いにも予定よりも動物が経過中に死亡するようなことがなく経過したため次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
閉経後骨粗鬆症動物モデルでの検討を現在実施中であるが、次年度繰越金が発生したためそのほかの疾患モデルでの検討を追加して行う予定である。また計画を前倒して、至適な骨形成促進薬と骨吸収抑制薬の投与期間・投与間隔の検証を行う。
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