(研究目的)骨粗鬆症は高齢化が進むにつれて、世界中で増大する健康問題の一つとなっており、我が国において健康寿命延伸の阻害要因の一つとなっている。 本研究は骨粗鬆症に起因する脆弱性骨折に対して、骨形成促進薬と骨吸収抑制薬を組み合わせることで新世代の骨癒合促進治療法を確立することを目的とした。我々は種々の骨代謝修飾薬の組み合わせによる骨折治療法を開発し、その効果を検証することを計画した。 (研究実績)複雑な骨折修復過程を皮質骨修復と海綿骨修復に各々区別し、皮質骨・海綿骨各々の骨欠損修復過程における骨形成促進薬(テリパラチド)と骨吸収抑制薬(抗RANKL抗体製剤)の併用効果について検討した。各々の部位での骨修復過程を評価するモデルとして正常マウスと卵巣摘出マウスの大腿骨骨幹端部と骨幹部に骨欠損を作成し、欠損部の骨再生過程を比較検討した。
海綿骨に作成した骨欠損部では骨再生初期に各薬剤は互いに干渉することなく、相加的に再生骨量を増加させた。特に、骨粗鬆症モデル動物でその効果は顕著であった。一方で、皮質骨再生について併用療法は海綿骨再生のような相加効果を認めなかった。同時に評価した骨再生部以外の骨粗鬆症部位でも良好な骨量の増加を認めた。併用療法では仮骨の残存や軟骨基質の残存などによる不良骨の骨再生の危惧があり、骨量は増加するが骨質を低下させる懸念があったが、我々は微小強度試験(ナノインデンテーション)を用いて再生骨の微細構造を解析し、その結果併用群において十分な強度の骨が形成されていることを確認した。両剤の併用による相加効果は海綿骨の多い領域に生じる椎体骨折や骨幹端部の骨折に対して有効な治療法となる可能性が示され、骨折治療と骨折予防の観点から理想的な骨粗鬆症骨折後治療となりうると考えられた。
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