骨粗鬆症患者から摘出された骨サンプルのシンクロトロンCT画像から、骨梁に生じた微細骨折の検出と、骨梁の微細構造解析を行った後、力学シミュレーション(有限要素解析)を行った。 骨サンプルは骨粗鬆症により大腿骨頚部骨折を生じた高齢女性から手術の際に摘出された大腿骨頭を用いた。大腿骨頭の荷重部直下の5立方ミリメートルの領域で以降の解析を行った。 微細骨折には修復機転が生じるため微細仮骨が形成されるが、多くの症例で複数の微細仮骨が形成されており、大腿骨頚部骨折を発生する以前から、骨梁レベルの骨折が生じていたことが推察された。 骨梁の微細構造は、骨梁の太さの平均値や、骨梁の単位距離を通過する数量、骨梁の形態的特徴(板状の骨梁など)といった、複数の骨微細構造パラメーターの解析を行った。骨梁骨折を多く生じている骨サンプルほど、骨梁の太さの平均値が小さいなどの微細構造の脆弱化が生じていた。 骨梁に強度と力学負荷の条件を与え、骨梁に発生している応力分布のシミュレーションを行った。さらに、骨梁の微細骨折の条件を定義し、骨梁骨折の発生をシミュレーションした。強度は骨密度値に基づいたヤング率を与え、力学負荷は大腿骨頭内の荷重方向に沿って静圧縮力を加えたモデルを作成した。実際に骨梁に生じている微細骨折との相関は必ずしも高くなく、実際の骨折は1軸の静圧縮ではなく、高い歪み速度や、曲げ、捻りなどの複雑な因子が関与していることが考察された。
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