研究課題/領域番号 |
15K20011
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
齊藤 正純 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30614101)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | heme oxigenase-1 / 特発性大腿骨頭壊死 / hemin / ステロイド / 低酸素 / 骨細胞 / アポトーシス / ネクローシス |
研究実績の概要 |
【研究の目的】ステロイド関連の特発性大腿骨頭壊死症(ION)の発生には,ステロイド投与後に骨内に生じる酸化ストレスやアポトーシスが関わっている.従って,低酸素状態や血流障害による骨細胞や血管内皮細胞へのストレスを軽減しIONの発生を予防できると考えられる.本研究の目的は,抗酸化・抗炎症作用を持つheme oxigenase-1(HO-1)の誘導を用いたION予防法開発につながる基礎研究を行うことである. 【研究実施計画】ステロイド投与・低酸素環境下では,骨細胞のアポトーシスおよびネクローシスが誘導されることが知られており,ステロイド関連のIONに関与している可能性がある.heminは心筋梗塞や腎虚血に伴う細胞死抑制作用が報告されている. 本研究では,ステロイド投与・低酸素環境において,heminによって誘導されるHO-1のもつ骨細胞死の抑制効果を評価した. 【対象と方法】マウス骨細胞を低酸素(1%)環境で培養し,メチルプレドニゾロン(1μM)を添加し骨細胞死を誘導した.ステロイド投与・低酸素環境で骨細胞を培養した対照群と,hemin 10μMを投与し同環境で骨細胞を培養したhemin群に分けた.HO-1の遺伝子と蛋白の発現をreal time PCRとWestern blot法を用いて2群間で比較した.さらに,フローサイトメトリーを用い,骨細胞のアポトーシスとネクローシスの割合を2群間で比較した. 【結果】hemin群ではHO-1の遺伝子発現および蛋白量が対照群と比べ有意に増加した.hemin群のネクローシスの割合(4.6%)は対照群(5.2%)と比べ有意な変化はなかった(p=0.505). hemin群のアポトーシスの割合(8.6%)は対照群(12.0%)に比べて有意に低下した(p=0.038).HO-1の細胞保護効果によって骨細胞のアポトーシスを抑制することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではHO-1誘導剤であるhemin投与により,ステロイド投与および低酸素環境での骨細胞のアポトーシスの割合が減少した. HO-1の細胞保護効果によって骨細胞のアポトーシスを抑制したと考えられる.heminは骨細胞のアポトーシスを減少させることで,骨壊死の予防に応用できる可能性がある. 本研究は,heme oxigenase-1(HO-1)の誘導を用いた ION 予防法開発につながる基礎研究である.HO-1による骨細胞の細胞死抑制の段階までは結果が出ていると考える.本研究の結果内容を今年度の学会で発表し,同時に論文作成を進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
HO-1誘導剤であるheminの投与濃度・投与時間に関しては,より至適な条件がある可能性がある.まだ行っていないheminの投与条件で実験を試行していく予定である. 当該年度の研究結果からhemin投与により,ステロイド投与および低酸素環境での骨細胞のアポトーシスの割合が減少することが明らかになったが,実際にHO-1による効果であるかは議論の余地がある.従って,HO-1の発現を選択的に抑制できるsiRNAやプロトポルフィリン(ZnPPIX)を用いたHO-1抑制実験を行い,HO-1の細胞死に与える影響について更に正確な作用機序を明らかにしていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に必要な実験用試薬,培地,細胞を購入したが,当初の予定よりも使用量が少なく実験を進めることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の追加実験を進めるにあたって使用する実験用試薬,培地,細胞等を購入する予定である。
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