ステロイドと低酸素によって,骨細胞のアポトーシスおよびネクローシスが誘導されることが知られており,ステロイド関連大腿骨頭壊死症の病態に関与している可能性がある.heminによって誘導されるHO-1 (heme oxygenase-1)は,抗酸化および抗炎症作用を持ち,細胞保護効果を有する.本研究の目的は,ステロイド投与・低酸素環境における,HO-1の骨細胞に対する細胞保護効果を評価することである. 定常酸素(20%)でマウス骨細胞を培養した対照群と,hemin 10μMを投与し同環境で培養したhemin群,HO-1阻害剤を加えたhemin-PP群を作成した.HO-1の遺伝子と蛋白発現をreal time PCRとWestern blot法を用いて3群間で比較した.次に,control群: 定常酸素,DH群:デキサメサゾン(Dex)1μMと1%酸素で24時間培養,DH-h群: hemin 添加後,Dexと1%酸素で培養,DH-h-PP群: heminおよびHO-1阻害剤添加後にDexと1%酸素で培養,の4群を作成した.各条件で培養後,細胞死の割合をフローサイトメトリーで測定し4群間で比較した. hemin群では,対象群よりHO-1の遺伝子発現が有意に増加し,HO-1の蛋白発現量が増加した. hemin-PP群では,HO-1遺伝子の発現が抑制された.細胞死の割合は,control群と比べ,DH群では有意に増加した.DH-h群ではhemin投与によって細胞死がDH群と比べて有意に減少した. DH-h-PP群では,細胞死抑制効果が減弱しDH群と有意差が無くなった. 本研究ではHO-1誘導剤であるhemin投与により,ステロイドと低酸素による骨細胞死の割合が減少した.HO-1阻害剤によって,その効果は減弱し細胞死が増加した.HO-1の細胞保護効果によって骨細胞死を抑制したと考えられる.HO-1誘導は,骨壊死予防に有効な可能性がある.
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