研究実績の概要 |
交通外傷後の骨折は、骨膜損傷を伴うため極めて難治性である。昨年度までに細菌性コラゲナーゼのコラーゲン結合ドメイン(CBD)と塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)からなるコラーゲン結合型bFGF(bFGF-CBD)と人工コラーゲン(poly(pro-Hyp-Gly)10)の併用が骨形成促進作用に有用であることを示してきた。さらに、2つのCBDをアンカーにもつコラーゲン結合型bFGF(bFGF-CBD-CBD)がさらに高い骨形成促進効果を持つことを明らかにした。本年度は、交通外傷後を模擬した難治性マウス骨折モデルを作成し、poly(pro-Hyp-Gly)10とbFGF-CBD-CBD複合体の効果を検討した。 9週齢雄性C57BL/6Jマウスの大腿骨を骨幹部で骨切りし、骨折部周囲の骨膜を電気メスで焼灼させることで難治性骨折モデルを作製した。骨折のみさせた群(control群)、人工コラーゲンのみを投与した群(poly(pro-Hyp-Gly)10群) 、bFGF、bFGF-CBD-CBDをそれぞれpoly(pro-Hyp-Gly)10と混合し、注射針を用いて骨折部に投与した。(各群n=10) 骨折後 2,4,6週でmicro-CTを撮影し、新生骨量(BV)、骨塩量(BMC)を測定した。また、2,4,6週でX線撮影を行い骨癒合率を測定した。骨折後4週において、poly(pro-Hyp-Gly)10/ bFGF-CBD-CBD群は他群と比較して有意にBV、BMCが有意に高かった。骨癒合率は骨折後4週では有意差がなかったが、骨折後6週では有意にpoly(pro-Hyp-Gly)10/bFGF-CBCBD群で高かった。人工コラーゲンと bFGF-CBD-CBDの組み合わせはマウス難治性骨折モデルにおいて骨形成を促進し、骨癒合率を改善させることが明らかになった。
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