研究課題/領域番号 |
15K20016
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
宮城 正行 北里大学, 医学部, 助教 (90627556)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炎症性サイトカイン / 神経成長因子 / 骨粗鬆症性疼痛 |
研究実績の概要 |
本研究では、10週齢雌性のC57BL/6J マウスに対し、卵巣を摘出して骨粗鬆症を模した卵巣摘出モデルを作成し、用いた。比較群として卵巣露出のみのsham手術を行ったsham群も用意した。卵巣摘出骨粗鬆症モデルマウスにおける椎体、大腿骨の骨密度、Bone Volume Fractionの測定をqCT、μCTを用いて行った結果、sham群と比較し、有意に減少していた。 次に、骨密度が減少した骨粗鬆症椎体、大腿骨内に発現する物質を評価した結果、炎症性サイトカインであるインターロイキン1ベータ(IL-1b)と神経成長因子であるNGFの発現が上昇していた。炎症性サイトカインはアラキドン酸カスケードを促進し、PGE2の発現を促進し、疼痛にかかわる他、NGFの産生を促進し、NGF自体も疼痛に関与するため、骨粗鬆症状態が疼痛を惹起している可能性が示唆された。 また、椎体骨内に侵入する微小神経について、免疫組織学的に評価を行った結果、骨粗鬆症椎体内に侵入する多数のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP:炎症性疼痛ペプチド)陽性のPGP9.5陽性神経線維を多数確認した。これらの神経線維が疼痛伝達に関与している可能性が示唆された。 なお、骨粗鬆症由来疼痛の行動評価のため、尾懸垂試験を行って評価したが、sham群と比べ、明らかな変化が認められなかった。腰痛などを含む運動器疼痛の行動評価には確立したものがなく、本研究では腰痛行動評価の一つの可能性として尾懸垂試験を採用して評価を行ったが、骨粗鬆症に由来する疼痛に関しては尾懸垂試験では困難であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は骨粗鬆症由来疼痛の発生機序について明らかにすることが目的であったが、骨粗鬆症椎体に発現する物質を同定できたほか、椎体内に侵入する微小神経も確認することができ、おおむね計画通りと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は骨粗鬆症治療が骨粗鬆症由来疼痛にあたえる影響について調査するため、副甲状腺ホルモン(PTH)の間欠的投与が骨粗鬆症椎体、大腿骨内に発現する炎症性サイトカインや各種成長因子に与える影響について調査を予定している。行動評価も予定していたが、尾懸垂試験では、骨粗鬆症モデルにおいて明らかな変化が見られなかったことから、今回は、行動評価は行わない。
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