研究実績の概要 |
変形性膝関節症(膝OA)の多岐にわたる分子レベルの病態の理解はいまだ乏しく, 病態の主座である軟骨変性のみでなく, 半月板・軟骨下骨・骨棘・滑膜等にも焦点をあて研究する必要性が求められている. 我々は, 滑膜に発現するパールカンに焦点をあて, その発現が欠損すると滑膜間葉系細胞(MSCs)から軟骨への分化を経て, 骨棘へ分化する過程の初期段階が抑制されることをin vivo, in vitroにおいて示してきた. しかし, 滑膜のパールカンの膝OAの骨棘形成過程にはいまだ不明な点が残る. 本研究の目的は, 膝OAに対するパールカンの治療応用へ向け, 滑膜MSCsから軟骨分化を経て骨棘形成に至る過程でのパールカンの作用機序を解析することである. 平成27年・28年度において, 関節内では軟骨にのみパールカンを発現し, 滑膜にはパールカンを発現しないマウス(Hspg2-/-Tg)と同腹のパールカン野生型マウス(Hspg2+/+Tg)を対象マウスとして用いて実験を行った. Hspg2-/-Tg滑膜と対照滑膜でその形態に差はなかった. 次に, Hspg2-/-Tg滑膜において, DNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析し, 対象滑膜の2倍以上発現の亢進している2遺伝子(CCL21,Mmrn1)を検出した. そのうち,CCケモカインのサブファミリーで,CCR7と結合し,さらにヘパラン硫酸プロテオグリカンと強い結合性を持つことが報告されているCCL21[Chemokine (C-C motif) ligand 21]に注目した. Hspg2-/-Tgの滑膜では, in vivoにおいてもin vitro においてもCCL21の発現が有意に高いことが示された.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は, パールカンとCCL21の関係性, およびその上流および下流シグナル,タンパクレベルの表現型について解析を滑膜培養細胞およびマウス膝OAモデルを用いて行う. 滑膜MSCsから3次元培養を用いた軟骨分化の過程の誘導後3h, 12hでの遺伝子発現に関してDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析を終えており, その結果より導き出される遺伝子の発現の確認やシグナル解析を行う.
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