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2015 年度 実施状況報告書

関節リウマチ滑膜組織の新しい培養方法の開発とその有用性

研究課題

研究課題/領域番号 15K20023
研究機関独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター)

研究代表者

櫻庭 康司  独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター), その他部局等, その他 (00747579)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード関節リウマチ / 滑膜培養
研究実績の概要

関節リウマチ(RA)は原因不明の慢性滑膜炎により破壊性の多関節障害を来す疾患である。近年、免疫抑制剤や生物学的製剤による強力な治療で予後は劇的に改善したが、不応例も認め、また治癒に至る症例は限られているため、より疾患特異性が高い治療法の開発が望まれる。そのためにはRAのより詳細な病態理解と病因解明は欠かせない。しかし、これまで行われてきた多くの関節炎動物モデルやヒト患者細胞などを用いた機能的な解析は、いずれもRA滑膜組織で起きている炎症病態を正確に再現できていない可能性がある。そこで本研究では、RA患者から採取した炎症滑膜組織を組織片のままで長期間培養する手法の確立を試みるものである。
RA滑膜組織の培養には、気相液相界面法(ALI)を応用した。また、その実用性を確かめるために、Scidマウス組織片移植法や液内培養と比較、検討した。組織学的検討したところ、Scidマウス組織片移植法では実質部の浸潤細胞は採取直後と差が小さかったが、マウス周囲組織との癒着があり表層細胞浸潤が消失していた。一方、ALIでは表層細胞浸潤が2週以上経過しても認めており、滑膜炎組織の構造が比較的長期にわたり保たれていた。さらに蛍光抗体染色では、表層でCD68、実質でCD3やCD20が陽性なっており、浸潤細胞の種類による空間的局在を保っていることが示唆された。液内培養法では組織片からの多数の細胞の脱落を認めた。フローサイトメーター解析でも液内培養法では殆どの細胞が死滅していたのに対し、ALIではCD4T細胞やマクロファージが多く生存していた。それと一致して、ALIではIL-6やIL-8の産生が維持された。培養中に抗TNF-a抗体を添加すると、IL-6やIL-8の産生は低下した。このように、ALIはRA滑膜組織片を炎症滑膜炎の特徴を維持したまま長期に培養継続できる方法であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

関節リウマチ滑膜組織を気相液相界面培養したところ、長期にに渡り培養が継続でき、さらに滑膜炎の状態を維持できることを証明した。これは、今後滑膜炎の病態を詳細に解析したり、新規抗リウマチ薬を開発する上で非常に有用な研究ツールとなる可能性がある。この研究成果については、学術集会で報告を行い、Arthritis & rheumatology誌にも掲載した。

今後の研究の推進方策

気相液相界面培養したRA滑膜組織片に操作を加え、慢性滑膜炎のメカニズムを解析する。
気相液相界面培養法の培養液中に、現在臨床応用されている各種RA治療薬を添加し、滑膜組織片の変化について上記に上げた評価項目を解析する。各種薬剤の実臨床における疾患治療効果との相関も検討する。
近年、関節炎動物モデルやヒトRA研究において、既存の治療薬以外にも様々なサイトカインやケモカインがRA滑膜炎と関連していると報告されている。申請者もコラーゲン誘導関節炎モデルを用い、IL-21が関節炎発症に重要な役割を持つことを確認している(現在論文投稿中)。
そこで、気相液相界面培養する滑膜組織片に各種サイトカインの添加や阻害を行い、慢性滑膜炎の病態がどのように変化するのか観察する。また、MHCもしくは自然免疫受容体の阻害剤を用い、CD4T細胞やマクロファージなどの活性化を直接阻害した際の影響も検討する。主に病理学的変化や発現遺伝子の変化、炎症性サイトカイン産生の変化などを検討する予定だが、培養液中にBrdUを添加して滑膜組織内の細胞増殖を検出したり、BrefeldinAを加えた後に細胞内染色をするなども行い、慢性滑膜炎をきたすメカニズムの解明を試みる。
また、ゲノム編集技術やsiRNAを用い特定の遺伝子を欠損させ、慢性滑膜炎への治療効果や影響についても検討する。

次年度使用額が生じた理由

気相液相界面培養法を用いて関節リウマチの炎症性滑膜炎の病態解明を進めるにあたり、関連する費用を次年度も計上する必要が生じたため

次年度使用額の使用計画

培養用のプレート、培養液、各種薬剤、サイトカイン計測キット、細胞増殖計測キットなどの消耗品、病理組織作成の費用、統計解析に使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Successful in vitro culture of rheumatoid arthritis synovial tissue explants at the air-liquid interface2015

    • 著者名/発表者名
      Koji Sakuraba, Kenjiro Fujimura, Yasuharu Nakashima, Ken Okazaki, Jun-ichi Fukushi, Masanobu Ohishi, Akiko Oyamada, Yukio Esakio, Hisaaki Miyahara, Yukihide Iwamoto, Yasunobu Yoshikai, Hisakata Yamada
    • 雑誌名

      Arthritis & Rheumatology

      巻: 67 ページ: 887-892

    • DOI

      10.1002/art.39019

    • 査読あり
  • [学会発表] 成人T細胞性白血病患者にHTLV-1関連関節炎を発症した1例2015

    • 著者名/発表者名
      櫻庭康司, 樋口茉希子, 宮村知也, 江崎幸雄, 嘉村聡志, 藤村謙次郎, 宮原寿明
    • 学会等名
      第43回日本関節病学会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2015-11-05 – 2015-11-06
  • [学会発表] コラーゲン誘導関節炎の発症にはB細胞へのIL-21シグナルが重要な役割を果たす2015

    • 著者名/発表者名
      庭康司, 藤村謙次郎, 小山田亜希子, 宮原寿明, 岩本幸英, 山田久方
    • 学会等名
      第30回日本整形外科学会・基礎学術集会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      2015-10-22 – 2015-10-23
  • [学会発表] IL-21 signaling in B cells is critical for the development of collagen induced arthritis in mice2015

    • 著者名/発表者名
      Sakuraba K, Fujimura K, Kamura S, Esaki Y, Miyahara H, Yamada H
    • 学会等名
      Annual European Congress of Rheumatology
    • 発表場所
      Rome, Italy
    • 年月日
      2015-06-10 – 2015-06-13
    • 国際学会
  • [学会発表] コラーゲン誘導関節炎の発症にはB細胞へのIL-21シグナルが重要な役割を果たす2015

    • 著者名/発表者名
      櫻庭康司, 藤村謙次郎, 小山田亜希子, 宮原寿明, 岩本幸英, 山田久方
    • 学会等名
      第59回日本リウマチ学会総会・学術集会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-04-23 – 2015-04-25
  • [図書] リウマチ科2016

    • 著者名/発表者名
      櫻庭康司、山田久方
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      科学評論社

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公開日: 2017-01-06  

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