研究課題/領域番号 |
15K20024
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
笹森 徹 北海道大学, 大学病院, 助教 (40746848)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ラット脊髄損傷モデル / 脊髄刺激療法 / 機械的アロディニア / マイクログリア |
研究実績の概要 |
本研究を実施するにあたり,北海道大学へ実験計画書を提出し,2015年12月3日付で承認を得た (承認番号15-0147). 初年度の成果として,まずは,35gに調整されたmodified aneurysm clipを用いてラット脊髄損傷モデルを作製し,後肢の運動機能および機械刺激による逃避閾値 (withdrawal threshold; WT)の経時的評価を行った.後肢運動機能は,Basso Beattie Bresnahan (BBB ) locomotor rating scaleを用いて,後肢WTは,電子痛覚測定装置 (Electrovonfrey, model 2290, IITC Inc, Woodland Hills, CA)を用いて評価した.その結果,後肢運動機能については,モデル作製直後よりBBBスコアの著明な低下を認め,4週間の追跡期間中,低下した状態が維持された.次に,後肢WTについては,モデル作製後2週間目より,著明な低下が確認され,その後,2週間同様の状態が確認された.損傷脊髄の組織学的検討は,行うことができなかった. 次に,ラット用脊髄硬膜外刺激電極を入手することが困難であったため,バイオリサーチセンターと協力し,同電極の開発を行った.2極の円盤型プラチナ電極が配置された試作品①(幅2.0mm,長さ6mm,厚さ1.0mm)を2匹のラットに対し留置したが,いずれのラットにおいても,直後より,後肢運動機能の著明な低下を認め,電極留置に伴い脊髄損傷を生じたものと判断した.現在,幅1.8mm,厚さ0.7mmに改良した試作品②を作製中であり,今後,実際にラット脊髄硬膜外へ留置し,脊髄損傷発生の有無を評価する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前述のように実験計画書の承認日が2015年12月3日と,当初の予定より大幅に遅れたため,実験開始時期が大幅に遅れた. また,ラット用の脊髄硬膜外刺激電極を入手することが困難であったため,実際に,脊髄刺激を行う実験を行うことができなかった.そのため,既報 (Maeda Y et al. Pain 15, 2008)を参考に,バイオリサーチセンターの協力のもと,現在,ラット用脊髄硬膜外刺激電極を開発中である.試作品①として,2極の円盤型プラチナ電極が配置された幅2.0mm,長さ6.0mm,厚さ1.0mmの電極を作製した.同電極をこれまで2匹のラットに対し,第6,7胸椎レベルの硬膜外腔へ留置した.しかし,全てのラットにおいて,留置直後より後肢運動機能の著明な低下を認め,SCS電極留置に伴い,脊髄損傷を生じたと判断した.現在,幅1.8mm,厚さ0.7mmに改良した試作品②を作製中であり,今後,実際にラット脊髄硬膜外へ留置し,脊髄損傷発生の有無を評価する.
|
今後の研究の推進方策 |
まず, 圧が35gに調整されたmodified aneurysm clipを使用し,ラットの胸髄脊髄損傷モデルを作製し,脊髄損傷後2週間目から,後肢のWTの低下,つまりmechanical allodyniaが出現することが確認された.当初の実験計画では,脊髄損傷後1週間目からの脊髄刺激開始を計画していたが,2週間目以降の開始が望ましいと思われた. また,試作した脊髄硬膜外刺激電極については,留置により脊髄損傷を生じてしまうことが確認されたため,今後も検討が必要である.現在,幅1.8mm,厚さ0.7mmに改良した試作品②を作製中であり,今後,実際にラット脊髄硬膜外へ留置し,脊髄損傷発生の有無を評価する.また,現在使用しているラットは200-250gのサイズであるが,今後,さらに大きなサイズのラットも使用し,脊髄損傷を生じないかの検討も必要である.SCS電極の問題が解消された後,実際にラット脊髄損傷モデルへの脊髄刺激を開始する.具体的には,損傷脊髄高位の頭側,尾側で脊髄刺激を行い,後肢運動機能およびWTの経時的変化を比較する.さらに,脊髄の組織学的評価も行い,後角におけるマイクログリアの活性について,比較検討する.
|