前年度にカプサイシンの発痛効果、オピオイド(モルヒネ)の鎮痛効果をフラビン蛋白蛍光イメージング法により観察した。カプサイシン投与時には体性感覚野におけるフラビン応答の増強が、モルヒネ投与時にはフラビン応答の減弱が得られた。しかし、行動実験を行うにあたり、モルヒネでは異常行動が見られた。von Frey testが適切に施行できないと判断し、使用薬剤を変更した。発痛物質としてはカラゲニンを使用し、炎症性疼痛モデルを作成した。鎮痛薬にはケトプロフェン(非ステロイド性抗炎症薬:NSAID)を使用した。 まずカラゲニンの発痛効果をvon Frey testで確認した。カラゲニン投与後、30分から後肢逃避閾値は低下し、180分までは閾値の低下が持続した。これをフラビン蛋白蛍光イメージング法で測定すると右体性感覚野の応答は増強し、行動実験と同様に180分まで持続した。炎症性モデルでは後肢逃避閾値の低下に一致したフラビン応答の増強を認めた。 次にケトプロフェンによる鎮痛効果をvon Frey testで観察した。カラゲニンを投与し後肢逃避閾値が低下したマウスにケトプロフェン100mg/kg皮下投与した。30分後、60分後では有意な後肢逃避閾値の上昇を認め、その後後肢逃避閾値は再度低下した。これをフラビン蛋白蛍光イメージング法で観察すると行動実験と同様に30分後、60分後でフラビン応答の減弱を認めた。行動実験で効果が認められなくなる90分後、120分後では再度応答の増強を認め、ケトプロフェン投与後後肢逃避閾値の低下に一致したフラビン応答の減弱を認めた。 これらのことから発痛・鎮痛はフラビン蛋白蛍光イメージングを用いてそれぞれ応答の増強・減弱として測定することができ、マウスの痛みを可視化することができる可能性が示唆された。
|