研究課題/領域番号 |
15K20033
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
本田 康子 富山大学, 附属病院, 助教 (50724572)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海馬 / 糖尿病 / 興奮性シナプス伝達 / 抑制性シナプス伝達 / 揮発性麻酔薬 / 静脈麻酔薬 |
研究実績の概要 |
糖尿病は中枢神経系にも影響を及ぼすことが知られており,臨床における糖尿病患者の麻酔では,麻酔作用が不安定になることが経験的にに知られている.今回我々は、糖尿病モデルラットから摘出した海馬スライス標本を用い、糖尿病による全身麻酔作用修飾機序を検討した。 《方法》糖尿病ラット(DM群)および対照ラット(C群)を麻酔した後、脳を摘出し海馬スライスを作製した。海馬放線状層を電気刺激することにより,海馬CA1錐体細胞の集合電位(PS)を誘発した.また刺激電極を海馬白坂(Alv)に置き,反回性抑制ニューロンからの入力をシミュレートした.統計学的検定は,2-way ANOVAを用いた. 《結果》Alvにプレパルスを与えることにより,反回性抑制が促進された(RIE)神経回路を作製した.PSの振幅に及ぼす揮発性麻酔薬(セボフルラン,デスフルラン)および静脈麻酔薬(チオペンタール,プロポフォール)の影響を検討し,DM群とC群を比較した.揮発性麻酔薬(セボフルラン,デスフルラン)によるPS抑制作用は,両群間で有意差が認められなかったが,静脈麻酔薬(チオペンタール,プロポフォール)の作用は,C群に比較してDM群で減弱していた.. 《結語》静脈麻酔薬は抑制性シナプス伝達を促進することにより抑制効果をきたす.DMラットでは抑制性シナプス伝達に何らかの障害があるために,全身麻酔薬の作用が不安定になったと考えられる.揮発性麻酔薬では,このような不安定性は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病モデルラットが順調に入手できたため,糖尿病モデルラットの海馬スライス実験が予定通り行えた.
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病では中枢神経系にも加齢性変化が現れやすいという報告があるので,加齢糖尿病モデルラットを用いた検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
糖尿病モデルラットの入手および海馬スライス標本作製が順調だったため.
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次年度使用額の使用計画 |
高齢糖尿病ラットの入手に用いる.
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備考 |
1846年ボストンのマサチューセッツ総合病院において,Mortonにより世界で初めてエーテルによる全身麻酔が施行されてから160年以上が経過したが,全身麻酔のメカニズムには依然不明な点が多い.しかしながら,近年ではパッチクランプ法や遺伝子工学などの分子生物学的手法を駆使した解析も進み,麻酔の迷宮の一端が解き明かされようとしている.麻酔薬の作用機序仮説について,我々の研究成果を中心に概説したい.
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