研究課題/領域番号 |
15K20036
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
布施谷 仁志 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (00588197)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オキシトシン / 帝王切開術後痛 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、本研究の目的である「血中オキシトシン濃度と妊婦の帝王切開術後痛の回復との関連性」を明らかにするため、まず授乳回数と帝王切開術後痛の回復との関連性を検討した。平成28年度は、血液サンプルから血中オキシトシン濃度を測定し、それと帝王切開術後痛の回復との関連性について検討を進めた。予備研究では、妊婦の開腹術後痛は、非妊婦の開腹術後痛と比較して、回復が早いという結果が得られていたが、その機序は不明であった。われわれは、この理由を、性ホルモンであるオキシトシンが下行性疼痛抑制系を介して鎮痛効果を発揮し、術後痛の回復を促進させるためではないかと仮説を立てた。これまでに取得した帝王切開術後妊婦15名のデータ解析から、授乳回数が多いほど体動時痛および創部の2次性痛覚過敏範囲の回復が早いという結果が得られた。しかし、血中オキシトシン濃度と体動時痛や2次性痛覚過敏範囲の回復には、正の相関が得られなかった。この結果は、授乳回数と帝王切開術後痛の回復とに関連があるとするこれまでのわれわれのデータを支持しないもので、血中オキシトシン濃度の測定時期や測定方法に修正が必要であることが示唆された。 一方、痛みの受容は、不安や抑うつで増強される。オキシトシンは、中枢神経に作用し、抗不安作用を持つとされる。授乳回数の違いが、妊婦の精神状態の安定化や痛みの受容を変化させるかどうかを簡易型マクギル疼痛質問票を用いて検討を開始した。今後、分析を加える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
血液サンプルは授乳後1時間以内に採取していたが、そのタイミングでは血中オキシトシンの上昇を反映していない可能性があることがわかった。血液採取のタイミングの変更、あるいはオキシトシンを測定するためのサンプルを血液以外に変更するなど測定方法の修正が必要となり、研究が中断した。
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今後の研究の推進方策 |
オキシトシン測定のためのサンプル採取を血液から唾液に変更することも考慮する。それでも安定した結果が得られない場合は、ヒトでの検討を一時中断し、安定して作製できている動物モデルによる実験を前進させる。オキシトシンの鎮痛効果を行動実験で確認するとともに、その機序についても細胞外電位記録や分子化学的手法により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
オキシトシン血中濃度測定数が、当初の目標数よりも少なかった。また、動物実験に使用するラットや分子化学的手法に使用する試薬も、当初の目標数よりも少なかった。このため、当初計画で見込んだ額よりも測定に使用する検査・試薬等に費用がかからず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、オキシトシン測定を、血中濃度とともに唾液中濃度も実施すること、および動物モデルによる疼痛関連行動の解析や電気生理学的実験および分子化学的実験のために使用する。これらの実験から得られた成果の学会発表や論文作成にも使用する。
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