研究課題/領域番号 |
15K20039
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
石田 公美子 (松尾公美子) 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (80467191)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経因性疼痛 / CGRP / CGRPファミリー |
研究実績の概要 |
神経因性疼痛は、末梢・中枢神経系の損傷により生じる痛みであり、外傷・脊椎・脊髄疾患、糖尿病性ニューロパチー、代謝異常に起因し治療に難渋する痛みである。これまで様々な治療が試みられてきたが、いまだ決定的な治療法がない。一方、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は痛みの伝達・修飾物質として重要であるが、その詳細な機序はいまだ不明である。本研究では、独自に作製された遺伝子欠損マウスを用いて①CGRPファミリーであるCGRPやアドレノメデュリン(AM)が神経因性疼痛に関与しているメカニズムを明らかにし、②カルシトニン受容体様受容体(CRLR)と、受容体活性調節蛋白(RAMP)をターゲットとした、新たな鎮痛法の開発を目指す。 平成28年度は、αCGRP遺伝子欠損マウスと野生型マウスを用いて、過去の文献に基づきセボフルラン麻酔下(3-5%)に一側の総腓骨神と脛骨神経を結紮・切断するSpared nerve injuryモデルと、一側の坐骨神経の1/3から1/2を結紮するPartial sciatic nerve ligationモデルの2種類の神経因性疼痛モデルを作製した。疼痛モデル作製後1日目から自発関連行動の観察、von Frey フィラメントを用いた侵害性機械刺激に対する逃避閾値、侵害性熱刺激に対する逃避潜時を経時的に記録した。平成29年度は行動試験を行うとともに脊髄、疼痛部位へのCGRP・AM受容体拮抗薬の投与や免疫組織学的検討、電気生理学的検討を行い、CGRPファミリーの神経因性疼痛モデルへの関与について検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は2種類の神経因性疼痛モデルをαCGRP遺伝子欠損マウスと野生型マウスを用いて作製し、疼痛行動を検討した。使用される遺伝子欠損マウスと野生型マウスは、繁殖させたものを使用しているが、マウスの繁殖に想定以上の時間を要したこと、安定した神経因性疼痛モデルを作製することに想定以上の時間を要したことから、当初の予定より実験が遅れた。現在は安定したマウスの繁殖とモデルの作製が可能になり、徐々によい結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はαCGRP遺伝子欠損マウスを用いて2種類の神経因性疼痛モデルを作製し、疼痛行動の解析を行った。平成29年度は、神経因性疼痛モデルの疼痛行動の経時変化をさらに記録するとともに、脊髄や疼痛部位へのCGRP・AM受容体拮抗薬の投与や、脊髄・後根神経節におけるCGRPファミリーやその受容体、c-Fosの発現を免疫組織学的に検討し、脊髄後角ニューロンの機能変化を電気生理学的に検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は実験に使用する予定であったマウスの繁殖と安定した疼痛モデルの作製に想定以上の時間を費やしたために、予定よりも進行が遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度はCGRP受容体拮抗薬やAM受容体拮抗の使用、遺伝子欠損マウス使用時のPCRを用いたタイピング、免疫組織染色や電気生理学的手法を施行する予定である。
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