研究課題/領域番号 |
15K20041
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉山 勇樹 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (30624770)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 遷延性術後痛 / 筋凍結 / ミクログリア / 炎症細胞浸潤 |
研究実績の概要 |
遷延性術後痛のメカニズムを解明するために、組織の慢性炎症と急性痛から慢性痛への移行の関係に着目した。本研究は、凍結による筋挫傷によって局所に炎症を引き起こし、その治癒過程において炎症細胞の浸潤量を解析する。さらに、痛みの遷延を免疫組織学的研究で示し、遷延性術後痛モデルを確立することで、遷延性術後痛を発症させないための、新たな予防的治療法の開発を目指す。 全身麻酔下に、ラットの足底筋切開モデル(筋切開モデル)ならびに、‐190℃の液体窒素を用いて足底筋を凍結させた凍結筋損傷モデル(凍結モデル)を作成した。昨年度までの行動学的評価によって、自発痛関連行動ならびに痛覚過敏について、手術から3-5日後において凍結モデルが筋切開モデルに比べ有意に増大し、凍結モデルの痛みの遷延が確認された。また、脊髄におけるミクログリアの発現を評価するため、足底の支配領域である脊髄L4-5を、Iba-1を用いて染色した。手術4日後、7日後のラット脊髄において非術側に対する術側のミクログリア発現が増加していることが確認された。 今回あらたに、損傷を受けた足底筋を採取し、HE染色をおこない、組織の炎症細胞浸潤を評価した。凍結群において、損傷部位付近への強い炎症細胞浸潤がみられた。また、フローサイトメトリーによって、手術後の足底筋における炎症細胞を分離し、その浸潤量や細胞種類を検討した。手術後4日目において、凍結群でCD11陽性細胞数が増加しており、好中球などの炎症細胞が多く浸潤していることが示された。 平成28年9月に開催された国際疼痛学会(IASP)で本研究の途中結果を示し、他の研究者と論議を交わした。今後は不足している実験の追加、データのまとめ、論文作成を進め、学術雑誌への投稿をする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた行動学的検討は、統計学的処理も含めほぼ終了している。免疫組織学的検討も、凍結群において、脊髄のミクログリアの発現が遷延していることが遷延していることが示され、統計学的優位差も示された。さらに、当教室においてこれまでも使用されてきたフローサイトメトリーを用いた、筋への炎症細胞浸潤評価もおおむね完了しており、追加実験をおこなって統計処理を施行するのみである。また、国際学会において発表をおこない、研究データを公表済みである。
|
今後の研究の推進方策 |
不足している実験結果の収集、すなわちフローサイトメトリーによる「経時的な」炎症細胞浸潤の評価をおこなう。また、炎症細胞の種類の同定も詳細に解析する。これまでの研究結果の整理や論文作成を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より、動物購入費や抗体購入費が少なかったことに加え、当初計画で見込んだよりも安価で進捗できたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度請求額と合わせて、実験動物の購入費・維持費、各種抗体の購入費、実験器具などの諸物品の購入費、大学保有実験室の使用料(フローサイトメトリーやレーザー共焦点顕微鏡など)、実験補助の依頼費に充てる。
|