本研究は、凍結による筋挫傷によって局所に炎症を引き起こし、その治癒過程において炎症細胞の浸潤量を解析する。さらに、痛みの遷延を行動学的研究および免疫組織学的研究で示し、遷延性術後痛の動物モデルを確立し、ヒトにおける遷延性術後痛を発症させないための、新たな予防的治療法の開発を目指す。 以前に作成したふたつの傷害モデル、すなわち足底筋切開モデル(切開群)ならびに、凍結筋障害モデル(凍結群)を用いて研究を継続した。行動学的評価については、本年度におこなった追加実験と統計学的再検討の結果、凍結群は切開群に比べ、自発痛関連行動については手術から3-7日目、機械性痛覚過敏については手術から5-8日目において、有意な増大を認め、凍結モデルの痛みの遷延が確認された。 また、脊髄におけるマイクログリアの発現を評価するため、足底の支配領域である脊髄L4-5を採取し、マイクログリアに特異的に発現しているカルシウム結合タンパク質であるIba-1を用いて染色した。手術4日後、7日後のラット脊髄において、非術側に対する術側のマイクログリア発現が増加していることが確認された。これも、2017年度におこなった統計検討によって、有意差が示された。また、障害足の足底筋HE染色について、組織の炎症細胞浸潤を定量評価し、凍結モデルにおける炎症の増強を示した。 2018年度は、脊髄における痛み関連分子であるc-fosの染色をおこなったが、行動研究での疼痛の遷延、マイクログリアの発現との相関が示せなかった。同時にデータの整理、学術論文の作成をおこなっており、2019年度中に英文雑誌への投稿をおこなう予定である。
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