研究課題/領域番号 |
15K20044
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩崎 光生 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80528365)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心不全 / 心筋梗塞 / 麻酔 / 筋芽細胞シート / 再生医療 |
研究実績の概要 |
生後8週ラットをセボフルランの吸入により緩徐導入した後、挿管・人工呼吸とした。開胸後冠動脈の左前下降枝を確認し、これを結紮することで心筋梗塞を起こし、虚血性心不全を導入した。同様に開胸手術を行ったが冠動脈の結紮を行わなかったラットをコントロール群とした。手術から2週間後に心臓超音波検査で左心室駆出率(EF)を計測した。虚血性心不全を導入したラットのうち、EFが50%を超えるものを軽症心不全群、EF50%以下のものを重症心不全群と定義した。コントロール群ではすべてのラットにおいてEFが70%以上であった。各群のラットをセボフルランにより麻酔し、挿管・人工呼吸として、EFおよび心電図を測定した。EFに関しては麻酔導入前後で有意な変化は認められなかった。重症心不全群ではコントロール群に比してセボフルランによる麻酔導入後の心室性不整脈の発生頻度が多いことが明らかになった。一方軽症心不全群では不整脈発生頻度についてコントロール群との間に有意差が認められなかった。これらのラットの尾静脈にカテーテルを挿入し、アドレナリンを静脈内投与して致死的な不整脈(5連発以上の心室性不整脈、心室頻拍、心室粗動、心室細動)の発生の有無を確認した。重症心不全群において致死的不整脈発生率が高くなる傾向があった。現在、アドレナリン投与量を微修正してパワー分析による解析を行ない、適切なサンプルサイズで不整脈発生率について各群間に有意差を出すために至適なアドレナリンの投与量を求めるようとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
心筋梗塞モデルラットを作成する際に、冠動脈の走行の個体差などによりが十分な心筋虚血を導入できず、処置後も心機能が保たれているラットや、逆に広範な心筋虚血により手術直後に死亡するラットが多数存在していたため実験の進捗が思うに任せなかった。手術後の生存率を高める目的で手術中から手術後にかけて心電図をモニターするようにしたところ、手術直後の致死性不整脈の早期発見・心臓マッサージなどによる蘇生などにより術後死亡率は劇的に改善した。また、冠動脈結紮直後に不整脈が頻発したラットは術後重症心不全に移行する確率が高いことが明らかになり、虚血が不十分なラット(不整脈が発生しなかったラット)については冠動脈の結紮を追加することにより、虚血心不全ラット作成の成功率を高めることができるようになった。これらにより実験の効率は改善されつつ有り、次年度半ばには次の研究予定である筋芽細胞シート移植を行う段階に移行できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
セボフルレン麻酔下においてアドレナリンによる不整脈誘発率について重症心不全群とコントロール群の間に有意差がでるようなアドレナリン投与量を明らかにする。筋芽細胞シートを作成し、虚血心不全ラットに移植する。筋芽細胞シートの移植によって心機能が回復したラットにおいてアドレナリンによる不整脈誘発率が改善されるか明らかにする。また、セボフルラン以外の麻酔薬についても同様に検討し、心不全状態にどの麻酔薬が安全に使用できるか検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現残高では予定している物品購入では足りず、翌年度に繰り越して購入しようしているため
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次年度使用額の使用計画 |
試薬、動物(ラット)および実験用機具の購入
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