研究課題/領域番号 |
15K20045
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井浦 晃 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40467551)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GABAA受容体 / α5サブユニット / Tonic電流 / 海馬 / 麻酔薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、麻酔薬による記憶障害のメカニズムの解明及び、記憶障害に対するGABAA受容体α5サブユニット選択的阻害薬の有効性の検証を目的としている。当該年度は、脳内で記憶を司る海馬のGABAA受容体に対して麻酔薬が及ぼす影響を、電気生理学的手法(スライスパッチクランプ)を用いて調べた。 8週齢のオスC57BC6マウスを断頭して海馬を摘出し、250μmの厚さで海馬スライスを作成した。これを人工脳脊髄液(ACSF)で潅流した状態で、顕微鏡下にCA3領域の錐体細胞に対してホールセルパッチクランプ(voltage clamp)を行い、細胞電流を記録した。固定電位は0mVとした。また、電位依存性Naチャネル及びグリシン受容体の影響を除外する目的で、潅流液中にテトロドトキシン(0.5μM)及びストリキニン(2μM)を加えた。ベースラインの記録を行った後、潅流液にプロポフォール(10μM)もしくはミダゾラム(0.2μM)を加え一定時間潅流を行った後、再度電流を記録した。 GABAA受容体を介した抑制性電流には、一過性にチャネルが開いて電流が流れるPhasic電流と、持続的にチャネルが開いて電流が流れるTonic電流の2種類があり、今回の研究ではTonic電流について調べた。Tonic電流は、電気生理学的には、薬剤投与前後での電流の基線の変化として記録されるものである。 ミダゾラム投与により、10~20pAの基線上昇がみられ、ミダゾラムのTonic電流増強効果が示された。また、プロポフォールでも同様の効果が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は行動実験と電気生理学的実験の両面から、麻酔薬が記憶に対しては及ぼす影響を検討する予定であった。しかし、記憶障害を調べる行動実験に関しては、予想していたよりも評価の方法が難しく、具体的な実績を上げることができていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していたマウス行動学実験に関しては、麻酔薬暴露後の記憶力の評価が難しく、現時点では実績を上げることができていない。これに関しては、評価方法を変更することも検討している。 海馬スライスに対する電気生理学的実験は、おおむね予定通りに行っており、次年度では麻酔薬を投与した後にGABAA受容体α5サブユニット阻害薬であるL-655708を投与してその効果を調べる予定である。また、麻酔薬とL-655708の投与順を逆にして観察することも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
残高では通常使っている試薬等が購入できないため、翌年度の予算と合算した上で購入しようとしているため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度購入予定の試薬や動物に充てる。
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