研究課題
神経因性疼痛モデルとしてChronic constriction injury (CCI) モデルを作成し、sham群、control群および化合物X投与群に分け、化合物Xの疼痛に対する効果を、qRT-PCRやWestern blottingなどの生化学的手法を用いて解析した。CCIモデルラットではSTAT1の活性化が認められているが、新たなSTAT1阻害薬である化合物XよるSTAT1活性化抑制効果は認められなかった。しかしながら、化合物Xを投与した群では、qRT-PCRやWestern blotting においてSynapsin1、Synaptophysin、PSD95といった神経・軸索マーカーが有意に高く発現しており、化合物XがCCIによる神経の損傷を抑制することが推測された。しかしながら、化合物Xのはっきりとした作用機序は依然不明であり、qRT-PCRにおいて、炎症性サイトカインやケモカイン、また神経保護因子などのデータから、化合物Xによる炎症の抑制傾向もしくは神経保護的な傾向は認められるものの、有意な差は得られなかった。神経因性疼痛モデであるCCIでは、脊髄後角でのマイクログリアの活性化が認められるが、脊髄前角でもマイクログリアが活性化していることを今回の研究中に新たに見出した。脊髄前角でのマイクログリアの活性化は、脊髄後角の活性化とは少し形態が異なっており、後角ではアメーバ状に活性化しているのに対し、前角では神経の周囲を取り囲むような活性化をしている。これはSynaptic strippingと言われる現象で、神経に対し保護的に働いているものと考えられている。現在、引き続き化合物Xによる神経保護効果の背景を探るとともに、脊髄前角および後角でのマイクログリアの活性化の差異に関しても検討を重ねている。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Brain, Behavior, and Immunity.
巻: 60 ページ: 282-292
10.1016/j.bbi.2016.11.003.