重症敗血症は集中治療領域において主要な致死的病態である。一方で,最近では高齢化,ハイリスク手術,多剤耐性菌の増加により発症率は増加の一途をたどっている。さらに,重症敗血症から生存回復しても,日常生活に支障をきたすような機能障害を残す患者が多いことが問題となっている。このように,敗血症は発症率,死亡率が高いだけでなく,生存者にも解決すべき問題が多い病態である。そこで,我々はより簡便で,安全性が高く,治療効果を有した治療法の開発を目標に,光に着目した。われわれはこれまで光療法による抗炎症効果を見出し、検討を進めてきたが、光治療に関して十分なメカニズムの解明は行われておらず,さらなる研究展開により新たな生理作用や作用機序の解明が期待されている。 本研究は光療法おいて重要となる要素の探索と光の適切な照射方法を確立することを目的とし、各種波長光の照射がリポポリサッカライド投与による全身性炎症反応に及ぼす影響を行動リズム解析やサイトカインおよびケモカインを測定することで検討した。各種波長光照射はリポポリサッカライド投与前後のマウスの行動リズムへの影響を認めなかったが、緑色光および赤色光照射はリポポリサッカライド投与後の炎症性サイトカイン、ケモカインの産生を有意に抑制した。さらに緑色光は抗炎症性サイトカインの有意な上昇を認めた。これらの結果から、特定の波長光に抗炎症効果の鍵となる機序の存在が示唆された。
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