研究課題/領域番号 |
15K20054
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
東條 健太郎 横浜市立大学, 医学研究科, 特任講師 (80737552)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 急性呼吸促迫症候群 / 肺胞上皮細胞 / 低酸素誘導性因子 / プロリルヒドロキシラーゼ / 代謝リプログラミング |
研究実績の概要 |
前年度に確立したin vitroでのLPS+好中球による肺胞上皮細胞傷害モデルを用いた研究を行った.前年度までに低酸素誘導性因子(HIF)を活性化させるプロリルヒドロキシラーゼ(PHD)阻害剤DMOGを投与することで,HIF-1依存的に細胞生存率の低下を抑制できることを明らかにした.本年度はまずこのモデルにおいて①細胞生存率の低下が本当に細胞死によるものなのか②細胞死機構がアポトーシスなのかネクローシスなのか③細胞死の背景においてATPの低下が生じているのか検討すると共に,④DMOGによってHIF依存的な酸化的リン酸化から解糖系への代謝リプログラミングが生じるのか?⑤DMOGの細胞保護効果は代謝リプログラミングを介しているのかという点についてそれぞれ検討を行った. 細胞死の有無についてはフローサイトメトリーを用いて,肺胞上皮細胞の細胞膜が破綻していることを明らかにした.また,細胞死機構についてはcaspase 3/7阻害剤では細胞死が抑制されなかたものの,necroptosisの阻害剤necrostatin-1やcyclophilin D依存的なネクローシスの阻害剤cyclosporine Aによって細胞死が抑制されたことから非アポトーシス性の細胞死であることが示唆された.また細胞死と同時に細胞内のATPが低下していることを明らかにした. DMOGによるPHD阻害は肺胞上皮細胞の乳酸産生を増加させ,培地のpH,グルコースを低下させたことから酸化的リン酸化から解糖系へ代謝リプログラミングが生じていることが明らかになった.さらに,DMOGはATPの低下を抑制し,2-デオキシ-D-グルコースによって解糖系を阻害することでDMOGの保護効果が消失したことから,代謝リプログラミングをPHD阻害によるHIFの活性化が代謝リプログラミングを介して肺胞上皮細胞を保護することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロリルヒドロキラーぜ阻害剤を用いた低酸素誘導性因子の活性化によってエネルギー代謝をシフトさせることで肺胞上皮細胞を細胞死から保護することができることをin vitroの系を用いて明らかにすることができており,当初の計画目標はある程度達成できていると考えている. しかしながら,①動物実験においてDMOGが肺胞バリアーの保護効果をもつことは明らかにできている一方,細胞死や組織ATPに対して同様の保護効果が見られるのかを明らかにすることが出来ていないこと,さらに②論文作成,投稿がまだできていないということから進捗状況としてはやや遅れていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
LPS誘導性肺傷害マウスにおいてDMOG投与により肺胞上皮細胞死が抑制されること,またATP低下が抑制されることを明らかにする. さらに,研究成果について学会発表,及び論文の作成,投稿を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験においてプロリルヒドロキシラーゼ阻害が肺傷害における肺組織ATP濃度,肺胞上皮細胞死にどのような影響をあたえるのかについての検討が終わらなかったため. また,論文の作成,投稿が終わらなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
動物実験における試薬購入費,動物購入費にあてる. また,論文の校正,投稿費用および必要に応じて査読者の要求に応じた追加実験の費用にあてる.
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