研究課題/領域番号 |
15K20056
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
舟井 優介 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (60722486)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鎮痛作用 / 脊髄後角 / 麻酔薬 / パッチクランプ法 |
研究実績の概要 |
本研究では、主としてin vivoパッチクランプ法を用いて、オピオイド誘発性痛覚過敏のメカニズムを脊髄レベルで解析することが最終目標である。平成27年度には、ヒトでの手術麻酔をラットで再現することに重きを置き、その結果、基礎麻酔薬として使用したセボフルランが、脊髄レベルで非常に強い鎮痛作用を持つ可能性が示唆された。この影響は無視できないほど強力なものであるため、吸入麻酔薬自体による脊髄鎮痛作用をさらに詳細に調べる必要が生じた。 そこで平成28年度は、0.1-2MACのデスフルラン吸入による脊髄後角シナプス応答を記録した。臨床濃度である1MAC以上のデスフルラン吸入は、セボフルランと同様に、濃度依存的かつ可逆的に、痛覚刺激により惹起される神経細胞の活動電位や興奮性シナプス後電位を減少させた。抑制性シナプス後電位も用量依存的に減少した。興味深いことに、0.1-0.5MACの低濃度デスフルラン吸入では、逆説的に、脊髄後角の痛覚神経細胞の活動電位が亢進することが判明した。In vivoパッチクランプ法によって解析を進めると、低濃度デスフルランは、脊髄後角において興奮性シナプス後電位を増加させ痛覚過敏を誘発し、デスフルランの濃度上昇に伴って、抑制性シナプス後電位の増加や、興奮性シナプス高電位の減少などを介して、鎮痛作用が発揮されることが示唆された。平成29年度は、より詳細なシナプス応答の記録・解析を進め、行動実験による裏付けも行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ラットにおいてヒトでの手術麻酔を再現しながらin vivo パッチクランプ記録を行う技術の難度が高いため、当初は難航した。また、基礎麻酔薬として使用する吸入麻酔薬自体に、無視できない強力な脊髄鎮痛作用が存在する可能性が示唆されたため、これを詳細に解析する必要が生じた。同じ吸入麻酔薬であっても、セボフルランとデスフルランの間で脊髄応答が異なる可能性が示唆され、デスフルランについても多くの実験が必要となった。従って、当初のオピオイド誘発性痛覚過敏を調べる段階まで至らず、計画に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
デスフルランによる逆説的な痛覚過敏メカニズムを詳細に解析し、明らかにする必要がある。そのためには、電気生理学的検索に加え、行動実験によるアプローチも行う。 また、レミフェンタニル持続投与および投与中止後の脊髄シナプス応答を解析し、基礎となる麻酔薬による反応の差も明らかにすることで、オピオイド誘発性痛覚過敏のメカニズムに迫る。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な機器類は既に揃っているため、予算のほぼ全てを動物や薬品および実験消耗品の購入に充てた。研究の進捗が遅れているため、学会発表や論文作成に必要な費用を算定できなかったため、余剰金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の交付金と合わせ、行動実験に必要となるラット用ホット・コールドプレートを購入する予定である。その余剰金は、ラットや薬品、消耗品の購入にあてる。また、海外での学会発表費用も算定する予定である。
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