初期実験において、基礎となる全身麻酔薬が脊髄後角の痛覚伝達に強力な影響を及ぼしたため、その詳細な検討を要した。セボフルラン(0.1-2MAC)は濃度依存的に脊髄後角の痛覚伝達を抑制した。一方、デスフルランは麻酔域(>0.5MAC)ではセボフルランと同様の反応を生じ、低濃度(<0.2MAC)では逆説的に痛覚伝達を促進した。いずれの吸入麻酔薬も一次求心性線維終末からの興奮性伝達物質の放出に影響を及ぼし、抑制性シナプス伝達に与える影響は少なかった。プロポフォールの静注は痛覚伝達に有意な影響を与えなかった。熱刺激・寒冷刺激による行動実験でも低濃度デスフルランによる痛覚過敏作用が裏付けられた。
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