研究課題
高齢化が進行する本邦においては、心疾患や脳血管疾患などの血管病が、がんに次いで日本人の死因の2位になっている。血管病の1つである胸部大動脈瘤は瘤径が拡大した症例の非手術予後は不良である。一方、手術の重篤な術後合併症として脊髄虚血による対麻痺があり頻度は約5%と高い。回復困難な下肢運動機能低下が生じるため予防が非常に重要となるが、脊髄虚血の機序はまだ未解明であり、従って予防法も不十分である。過去の報告では脊髄虚血モデルラットにおいて、髄液中のグルタミン酸濃度が上昇することが判明している。本研究は、脊髄虚血モデルラットを作成し、脊髄前角でマイクロダイアライシス法を用い連続的にグルタミン酸濃度を測定することで脊髄虚血の機序の解明を行い、これに対する治療法の有効性について検討を行う事を目的としている。我々は、脊髄前角にてマイクロダイアライシスを行い、脊髄虚血後に脊髄前角のグルタミン酸濃度が直ちに上昇することを明らかにした。また同時に下肢の運動誘発電位を測定し、脊髄虚血により運動誘発電位が抑制されることを確認した。脊髄虚血に対して予防効果があると推測される、上肢、下肢を駆血することによるremote ischemic preconditioningを行うと、脊髄前角でのグルタミン酸濃度の上昇、運動誘発電位の低下が有意に抑制されることを発見した。今後、remote ischemic preconditioningによる脊髄虚血抑制の機序を解明するために、グルタミン酸受容体拮抗薬の投与などを行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
脊髄虚血モデルラットの作成を行った。脊髄前角にてマイクロダイアライシスを行い、脊髄虚血後に脊髄前角のグルタミン酸濃度が直ちに上昇することが判明した。また上肢、下肢を駆血することによるremote ischemic preconditioningを行うと、グルタミン酸濃度の上昇が抑制されることを発見した。
今後、remote ischemic preconditioningによる脊髄虚血抑制の機序を解明するために、グルタミン酸受容体拮抗薬の投与などを行う予定である。
残額が少額であり、購入できる物品がなかったため。
物品費として使用する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
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