全身麻酔薬(プロポフォール、デクスメデトミジン)が脳内時計遺伝子発現を変化させることが報告されている。NMDA受容体拮抗薬ケタミンがREM睡眠を増加させ、睡眠を変調させることが知られている。近年、NMDA受容体内在性リガンドであるD-アラニンが睡眠のリズムに関与することが示された。本研究では、D-アラニン代謝と全身麻酔薬による睡眠障害との関連性を明らかにすることを目的とした。D-アラニンはDアミノ酸酸化酵素によってケト酸に分解される。本研究ではモデル動物としてDアミノ酸酸化酵素欠損マウスなどを用いて解析した。Dアミノ酸酸化酵素欠損マウスは野生型に比べて血中D-アラニン量が高いことを明らかにした。。また、血中D-アラニン量は明期(休眠時)に高く暗期(活動時)に低い概日変動を示すことを明らかにした。背内側視交叉は概日リズムを統括する。背内側視交叉の投射先である視床下部のin vivoマイクロダイアリシスを行い、細胞外液中のD-アラニン量を測定した。D-アラニン分析は前年度で条件検討した電気化学検出器による高感度分析法を用いた。Dアミノ酸酸化酵素欠損マウスは野生型に比べてマイクロダイアリシス灌流液中のD-アラニン濃度が有意に高いこと、D-アラニン量は明期(休眠時)に高く暗記(活動時)に低い概日変動を示すことを明らかにした。本研究結果によりDアミノ酸酸化酵素欠損マウスは全身麻酔薬による睡眠障害モデルとして用いることが出来ることが期待された。
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