研究課題/領域番号 |
15K20066
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所) |
研究代表者 |
水原 敬洋 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), その他部局等, その他 (00637712)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メラトニン / ラメルテオン / 覚醒時せん妄 |
研究実績の概要 |
本課題の研究成果の一部をまとめたものを,2015年のヨーロッパ麻酔学会で発表し,2015年のEuropean journal of Anaesthesiology誌(インパクトファクター付き査読付き英文誌)に報告した.以下に概要を示す. 本研究課題は,メラトニン及びラメルテオンの小児麻酔後覚醒時せん妄予防効果を明らかにするために,平成27年度から平成29年度にかけてメタ解析とランダム化比較試験を連続的に行う計画である.平成27年度の研究計画の要はメラトニン前投薬による覚醒時せん妄予防効果をメタ解析の手法を用いて検討することであり,以下の手順でメタ解析を進めた:(1) 広範な文献検索,(2) 適格文献の選定,(3) 各文献からデータの抽出,(4) 効果量の統合と推定,(5) 感度分析や試験逐次解析などの追加解析. 広範な文献検索により1138本の候補文献が見つかったが,最終的に本テーマと合致すると判定された適格文献は4本であった.これらの文献からデータ抽出を行い,結果の統計学的統合を行った.これによりメラトニンの麻酔前投薬による小児麻酔後覚醒時せん妄予防効果はプラセボと比較した場合にリスク比が0.31(95%信頼区間:0.16 - 0.60)であることが分かった.但し,試験逐次解析を行うと,95%信頼区間が広がり(95%信頼区間:0.07 - 1.47),メラトニンの覚醒時せん妄予防効果は確定的なものではなく追加のランダム化比較試験が必要であることが分かった.現在までのエビデンスの蓄積はいまだ不十分であり,確定的な結論を得るために必要な症例数の22%程度までしか集まっていないことも分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,メラトニン及びラメルテオンの小児麻酔後覚醒時せん妄予防効果を明らかにするために,平成27年度から平成29年度にかけてメタ解析とランダム化比較試験を連続的に行う計画である.平成27年度にメタ解析を完了し,平成28年度から平成29年度にかけてランダム化比較試験を行う予定となっている.現在メタ解析は完了し,その成果を海外学会で発表するとともに査読付き英文誌上で報告も行った.現在ランダム化比較試験の実施準備を進めており,おおむね計画通りに研究が進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後はランダム化比較試験の研究計画立案と実施及びその成果の発表を行う予定である.まずはランダム化比較試験の詳細(研究デザイン,対象患者,疾患,必要症例数の算出などを含む)を決定し,プロトコールを作成する.プロトコール確定後,臨床試験の事前登録を行い,また,倫理委員会の承認も得た上で試験開始となる. 本施設における小児麻酔後覚醒時せん妄発生率は予備調査を行い測定済み(56.7%)で,その値とメタ解析で得られたリスク比の推定値(0.31)から必要症例数は合計50名と算出された.本施設は小児専門病院であり,今後2年間の研究期間において小児症例合計50名を確保することは十分可能で現実的な数値であると考えられる.研究デザインは二重盲検ランダム化比較試験とし,小児覚醒時せん妄の評価は,世界的な標準評価方法とされるPAED(Pediatric Anesthesia Emergence Delirium)スケールを用いて行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
メタ解析においてチーム会合を年間2回程度行う必要があると想定していたが,実際には電子メール連絡のみで研究が遂行可能であり,会合費が不要であった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度以降に行うランダム化比較試験でのチーム会合等に使用する予定である.
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